小さな銀河群同士の衝突で分離したダークマター

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【2014年6月9日 ヨーロッパ宇宙機関

小規模な銀河の集団同士が衝突してできた「弾丸銀河群」で、高温ガスとダークマターの分離が観測された。大質量の銀河団以外でこうした現象が見られるのは初めてだ。


弾丸銀河群の高温ガスとダークマターの分布

銀河群同士の衝突で分離した高温ガス(ピンク)とダークマター(青)、銀河の分布。ダークマターの分布は、その重力により背景の天体からの光がゆがんで見える「重力レンズ効果」から測定された。クリックで拡大(提供:ESA / XMM-Newton / F. Gastaldello (INAF/IASF, Milano, Italy) / CFHTLS)

画像は、うみへび座の方向およそ40億光年彼方の「弾丸銀河群」(Bullet Group)だ。ピンク色がX線で観測された銀河間の高温ガス、青色がダークマターの分布を示している。

この弾丸銀河群は、2つの銀河群同士が衝突したものとみられる。左右2つに分かれた青色の部分のうち右側が、画面左下から右上方向に移動して「弾丸のように」ぶつかってきた銀河群のようだ。2つの銀河群それぞれの銀河やダークマター分布はほぼ元のままだが、高温のガスは電磁相互作用を起こして混じりあい1つの大きな塊となっている。

このような高温ガスとダークマターの分離はりゅうこつ座の「弾丸銀河団」など一握りの大質量の銀河団では知られているが(参照:2012/3/5「理論をくつがえす?銀河団から取り残された暗黒物質」)、弾丸銀河群のような小規模な天体で見られるのは初めてだ。

数十個の銀河の集まりである銀河群は、数百〜数千の銀河から成る大質量の銀河団よりもはるかに数多く存在する。弾丸銀河群のような天体をサンプルとしてダークマターと普通の物質との相互作用を調べれば、ダークマターが宇宙全体でどのような役割を果たしているのかを新たな見地から探ることができるだろう。