2種類のガス流が織り成す連星系周辺の複雑な構造

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【2014年5月21日 国立天文台

450光年彼方の若い連星系の観測で、それぞれの星から噴き出すガス流の存在が明らかになった。主星からは幅広いアウトフローが、伴星からは細いジェットが出ている複雑な構造をしている。


連星系の鉄イオンガスの分布

ぎょしゃ座UY連星系の鉄イオンガス流の分布。左下は近づく方向、右下は遠ざかる方向の運動をするガス分布。クリックで拡大(提供:国立天文台。以下同)

主星からのアウトフローと伴星からのジェットのガス流構造

観測からわかった連星系のガス流構造。クリックで拡大

ぎょしゃ座UY星の想像図

ぎょしゃ座UY星の想像図。クリックで拡大

450光年彼方の若い連星系ぎょしゃ座UY星は複雑な構造をしている。お互いから約180au(太陽〜海王星の約6倍)しか離れていない2つの星は、それぞれが周りにガスと塵の円盤を持っており、さらに連星系全体を囲むような円盤構造(周連星系円盤)も存在する。

国立天文台の表泰秀さんらの研究チームは、米・ハワイのジェミニ北望遠鏡を用いてこの連星系におけるガス流を観測し、太陽系に近づく方向に運動するガス流と、遠ざかる方向に運動するガスの分布を調べた()。

近づく方向に運動するガス(画像1枚目左下)は伴星から主星方向に細く伸び、さらに主星の周囲に広がるように分布している。一方、遠ざかるガス(同右下)は主星の図中下方に広く分布し、伴星付近からさらに伸びている。

この結果から推察される連星系のガス流構造が、画像2枚目だ。近づくガスは、伴星からの細いジェットと主星からの幅広いガス流(アウトフロー)が見えたものだろう。遠ざかるガスは、それぞれの反対極側からのジェットとアウトフローであったことがうかがえる。

ジェットやアウトフローの有無は、連星系のそれぞれに異なる。今回観測されたぎょしゃ座UY星のような複雑な構造がどのくらい普遍的なものなのか、さらなる観測研究が待たれる。

注:「天体の運動の方向」 天体からの光のスペクトルを見ると、観測者から遠ざかる、または近づく運動をしていることがわかる。