若い星の周りに広がる、消えかけの遷移段階円盤

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【2014年4月3日 ハーバード・スミソニアン天体物理学センター

生まれたての星を取り巻くガスと塵の円盤は、時の経過とともに消えていく。600光年彼方にある星で、もうすぐ着納めのベビー服とも言える「遷移段階円盤」がとらえられている。


暗黒星雲「おおかみ座3」

Sz 91は、おおかみ座とさそり座の境界方向600光年彼方の暗黒星雲「おおかみ座3(Lupus 3)」にある。クリックで拡大(提供:ESO)

生まれたばかりの星の周囲には、その星の材料となった塵やガスの円盤が渦巻いている。こうした原始惑星系円盤は地球から見るとひじょうに小さくかすかだが、円盤中の塵が恒星からの光で暖められて放射する赤外線を観測することで、これまでにいくつかが直接とらえられている。

これらの“暖かい”円盤は、誕生後500万年以上経った恒星(少なくとも、太陽程度の大きさの星に限っては)の周りでは見られなくなる。その理由として、円盤中の物質が惑星形成に費されたか、すべて恒星に取り込まれた、あるいは恒星からの紫外線で拡散してしまったことなどが考えられる。

茨城大学やハーバード・スミソニアン天体物理学センターなどの国際チームでは、消える間際の「遷移段階円盤」をとらえることに成功している。ハワイのすばる望遠鏡やサブミリ波干渉計(SMA)を用いて太陽の半分の重さの恒星「Sz 91」を観測したところ、遷移段階円盤を示す低温波長域のサブミリ波(赤外線と電波の中間の電磁波)が見られた。円盤は半径65au(太陽〜海王星の約2倍)から170auまでの範囲に存在し(つまり円盤というよりドーナツ状に近い)、総質量は木星と同じくらい。さらに420auの距離にまでガスが広がっているようだ。

高温域の赤外線放射も見られることから、円盤と恒星との間の隙間に細いリング構造または惑星が存在することも示唆された。

Sz 91星は従来から惑星形成が終わりかけている段階にあると推測されており、今回の結果はそれを確定するものとなった。今後もアルマ望遠鏡での観測研究が予定されている。

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