天の川銀河の中心ブラックホール、ただいまガス雲が接近通過中

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【2013年7月18日 ヨーロッパ南天天文台

天の川銀河中心のブラックホールのそばを小さなガス雲が引き伸ばされながら通りすぎるようすを、欧州の研究者らが初めてとらえた。1年以上続くこの現象は、ブラックホール周辺の環境を詳しく知る手がかりになるとして注目を集めている。


ブラックホールに近づくガス雲の動き

ブラックホールに近づくガス雲の動き。2006年(青)、2010年(緑)、2013年(赤)の位置を示している。この図ではガス雲の形状など位置以外の情報は反映されていない。クリックで拡大(提供:ESO/S. Gillessen)

ブラックホールのそばを通過するガス雲のシミュレーション図

ブラックホールの重力で引き伸ばされながら接近通過するガス雲のシミュレーション図。クリックで拡大(提供:SO/S. Gillessen/MPE/Marc Schartmann)

天の川銀河の中心にあるブラックホールにガス雲が接近通過するという現在進行中のイベントが、南米チリ・パラナル天文台の超大型望遠鏡(VLT)で初めてとらえられた。この現象は以前から予測されていたもので、世界中の天文学者がその成り行きを見守っている。

地球数個分の質量を持つガス雲「G2」は、太陽の400万倍もの巨大質量ブラックホールからもっとも近いところでおよそ250億km(太陽〜海王星の距離のおよそ5倍)まで接近通過している。ブラックホールにのみこまれるかどうかの瀬戸際の距離だ。

ブラックホールの強い重力によりガス雲は1600億kmもの長さにまで引き伸ばされている。先頭部分はすでに最接近点を通過して時速1000万km以上のスピードで遠ざかる一方、後方部はまだブラックホールに向かって接近中のようだ。すべて通過し終えるまで1年以上つづく長期間の現象になりそうだという。

このガス雲がどうやってできたのかについて明確なことはわかっていない。Reinhard Genzelさんら研究チームではその観測成果から、雲の中に恒星は含まれておらず、ブラックホール周囲の恒星がガス雲の起源だと考えられるとしている。

今回のブラックホールへの接近通過を観測することで、ガス雲そのものや、今まで詳しくわかっていなかったブラックホールの周辺環境、強い重力による効果などについて新たなことがわかってくるだろう。

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