月面の強重力場から天体衝突の痕跡をさぐる

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【2013年6月4日 NASA

NASAの探査機「グレイル」のデータから、月面の重力の強い場所「マスコン」が天体衝突の痕跡であることが確認され、さらにその詳細が明らかになった。


月面の衝突盆地の重力分布

直径約420kmのフロインドリッヒ・シャロノフ(Freundlich-Sharonov)衝突盆地の重力分布。クリックで拡大(提供:H. J. Melosh, Purdue University and the NASA GRAIL team)

天体の地表には地形や地殻の物質密度の違いによる重力分布のムラがあるが、広範囲にわたって重力が強く高密度と思われる場所は特に「マスコン」(mass concentration=質量の集中)と呼ばれる。

月面のマスコンは1968年に見つかり天体衝突の跡らしいとはわかっていたが、2012年に月の重力場を調査したNASAの探査機「グレイル」のデータと天体衝突の理論モデルを組み合わせた研究により、今回初めてその成り立ちが確認された。

月面の重力分布では、マスコンはダーツの的のような模様として現われる。天体衝突の熱でどろどろに溶けた物質が固まって高密度になった中心部、それを取り囲む重力の弱い内側のリングがあり、さらに外側には噴出物が堆積した重力の強い場所がリング状に取り巻いている。

「グレイルの観測から、軽い地殻と高密度のマントルが天体衝突の衝撃で混ざり合ってマスコンができたことが示されています」(米パデュー大学のJay Meloshさん)。

こうしたマスコンは火星や水星にも見つかっている。その詳細な研究から、大規模な天体衝突現象やそれを受けた初期の惑星についての地質学的な理解が進むことが期待される。

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