矮新星ペルセウス座GKがゆるやかな増光を開始

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2013年3月22日 VSOLJニュース(296)】

数年に一度明るさが増す矮新星ペルセウス座GKが矮新星増光を開始した。18日までに12等級に達しており、今後の変化が注目される。


VSOLJニュースより(296)

著者:大島誠人さん(京大理)

新星は古い時代から「なにもないところに突然」現れる天体として知られてきました。現在ではそれをすべて新星と呼ぶわけではなありませんが、それでも古い時代に爆発したことがある新星というのは数多く知られており、新星が爆発後どのような振る舞いをするのかという観点からも興味を持たれています。

ペルセウス座GKは1901年に増光した新星です。もっとも明るい時には0等級で輝いたとされますから、新星の中でももっとも明るい部類に入るといえるでしょう。新星爆発から100年以上がたち、現在の明るさは13等級前後です。観測するには中程度の望遠鏡が必要な明るさですが、それでも新星爆発をした天体の中で2番目の明るさを持っています。

興味深いことに、この新星は数年に一度、矮新星増光を示すことが知られています。矮新星増光は白色矮星のまわりの降着円盤が一時的に明るくなる現象ですが、これは白色矮星への質量移動があまり高くない系のみで起こることが知られています。新星爆発は白色矮星の表面での核反応によって起こるため、爆発の際は白色矮星の表面が熱せられるのですが、これがしだいに冷えていく過程で矮新星増光を示すようになるのです。もちろんかつてのように0等級まで増光するわけではなく、もっとも明るい場合でも10等級程度です。それでも、小さな望遠鏡でも明るくなっているところが確認できます。

今年3月半ば、ペルセウス座GKは3年ぶりの増光を開始しました。3月18日現在、12等台前半に達しています。この天体は矮新星としては異例に遅いペースで増光するので、平常光度のうちの明るい値にすぎないのか、それとも増光を始めたのか、しばらくしないと判別が難しいのですが、3月10日ごろに増光を開始したと推定されます。最近の観測は以下のとおりです。

観測日
(世界時)
等級観測者
(敬称略)
備考
03/05.83913.0Chris Allenスウェーデン
03/07.82413.1Chris Allenスウェーデン
03/08.86613.0Chris Allenスウェーデン

03/09.02313.2Miroslav Komorousカナダ
03/11.81012.88Robert Fidrichハンガリーこのころに増光開始
(デジカメG等級)
03/13.83012.7Gary Poynerイギリス
03/15.02412.6Miroslav Komorousカナダ
03/16.81012.5Robert Fidrichハンガリー
03/18.02812.45Miroslav Komorousカナダ

上にも少し触れたとおり、この天体はひじょうに穏やかな増光を示すため最大光度に達するまでに1〜数か月程度かかり、その後の減光もひじょうに穏やかなスピードであるために増光自体が数か月にわたります。これは矮新星としては異例ですが、このような現象はペルセウス座GKが矮新星の中では長い軌道周期を持っているためです。そのような系ではお互いの距離が遠いために白色矮星上の円盤が大きく、円盤上に増光状態が広がるのに時間がかかる上に、円盤の内側から矮新星増光が始まるためこのような光度変化になるのです。

また増光の様子についても必ずしも一直線に増光するのではなく途中で一時的に暗くなったり光度曲線にいくつかの極大の山を作るなど、さまざまな振る舞いをすることが知られています。これから観測が難しくなってしまう位置なのが残念ですが、比較的小さな口径の望遠鏡でも数か月にわたる増光を追いかけることができますので観測可能な方は望遠鏡を向けてみてはいかがでしょうか。


ペルセウス座GKの位置

この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。[天体]メニューの「恒星」ダイアログで、変光星や新星の表示をオンにすると星図に表示されます(アルゴルの北東約5度のあたりです)。

また、新しいデータや番組をオンラインで入手できる「コンテンツ・ライブラリ」では、新星をわかりやすく×印で表示するための「新星(マークで表示)」ファイルも公開しています。あわせてお楽しみください。

〈参照〉

〈関連リンク〉

〈関連ニュース〉