黄色超巨星が超新星爆発を起こすシナリオを解明

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【2012年10月4日 カブリIPMU

昨年5月に出現した超新星2011dhの元となった天体は、同タイプの超新星爆発を起こさないと考えられていた「黄色超巨星」だった。カブリIPMUの研究チームが、新たなシナリオ構築によりこの謎を解き明かすことに成功した。


超新星2011dh

M51銀河の超新星2011dhの爆発前(左図)および爆発後(右図)の観測写真。クリックで拡大(提供:Conrad Jung)

黄色超巨星

超新星2011dhの爆発前の状態の想像図。連星系の一方の星の外層が伴星の重力によってはぎ取られ、黄色超巨星に進化したと考えられる(提供:カブリIPMU/Aya Tsuboi)

2011年5月、りょうけん座の銀河M51(通称「子持ち銀河」)に超新星が出現した(図1枚目)。SN2011dhと符号がついたこの天体の光の成分を調べると、爆発前の星が主に水素でできた外層をほとんど失っていた「IIb型超新星」と呼ばれるタイプのものであることがわかった。

ハッブル宇宙望遠鏡による爆発前の画像から、元の天体は黄色超巨星と見られた。だが進化の途中である黄色超巨星は、重力崩壊して超新星爆発を起こすにはまだ早いはずだ。

東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(カブリIPMU)のMelina Berstenさんが率いる研究グループはまず、爆発後の超新星の明るさの変化から、元の天体はやはり黄色超巨星で間違いないらしいということをつきとめた。

では、黄色超巨星はどのように水素の外層を失い、どのように爆発したのか?

水素の外層を失った過程については、超巨星と連星を成すパートナーの恒星にはぎ取られたとすれば自然に説明できる。こうした物質のやりとりをする連星がどのような道をたどるかについて計算シミュレーションを行ったところ、「125日周期でお互いの周囲を公転する、それぞれ太陽の16倍と10倍の質量の連星」の場合に、やがて片方が黄色超巨星となって爆発する結末を再現することができた。星中心部の質量や外層に残った水素の量もつじつまが合うものであった。

またこのモデルでは、もう1つの星は大質量の高温の星になっていることが示されている。表面温度が非常に高いために紫外線を多く放射し、目に見える光はほとんど出していなかったために、爆発前の画像では検出されなかったと考えられる。近い将来この超新星残骸が飛び散った後に、大質量で高温の星の光が検出されれば、このモデルが正しいことの有力な証拠となるだろう。

Berstenさんは、「この結果は、超新星の研究を進める上で、連星系の進化と爆発のメカニズムの関連を追究することが非常に重要であることを示しています。今後の観測で、私たちの予測が検証されることが楽しみです」とコメントしている。