小惑星ベスタで水の痕跡を発見

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【2012年9月24日 NASA

小惑星ベスタの表面に水らしき揮発物の存在が明らかになった。探査機「ドーン」のデータに基づいた2通りの研究によるものだ。


ベスタ地表の水素分布図

ベスタ地表の水素分布。赤道付近に高濃度(赤)の領域がある。水酸基もしくは水として含まれているようだ。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/UCLA/PSI/MPS/DLR/IDA)

マルシアクレーター

多数のくぼみ地形が集中しているマルシア・クレーター内部。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/ UCLA/MPS/DLR/IDA/JHUAPL)

火星とベスタのくぼみ地形

火星(左、中)とベスタ(右)のくぼみ地形の比較。どちらのくぼみも同じような過程で形成したと思われる。しかし、小惑星で大量に発見されたのは全くの予想外だった。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/MPS/DLR/IDA/JHUAPL)

小惑星ベスタは火星軌道と木星軌道に挟まれたメインベルト(小惑星帯)の中で2番目に重い天体だ。NASAの探査機「ドーン」は今年8月まで1年間その周回軌道で観測を行い、今月はじめにベスタを離れた後、次のターゲットである準惑星ケレスに向かっている。

今回の研究は高度約210kmからの観測に基づくもので、赤道付近の広い範囲に、隕石や塵で運ばれた水和物の痕跡をはっきりととらえることができた。ベスタの極地域では水の氷が存在できるのではと考えられていたが、月と違ってベスタには永久影(決して日が当たらない場所)がない。一方、今回痕跡が見つかった赤道付近では、水の氷は安定して存在できない。

ドーンのガンマ線・中性子検出器(GRaND)の観測では、水和物に含まれる水または水酸基のものと思われる水素が検出された(画像1枚目)。GRaND研究員のThomas Prettymanさん(惑星科学研究所)によれば、これは「炭素を含んだ隕石がベスタに衝突したときに運ばれた水和物のものと思われます。遅いスピードでの落下だったので、揮発物が逃げずに残ったのでしょう」ということだ。

GRaNDによるベスタの組成分析データは地球で見つかる隕石のものと一致しており、それらの隕石に豊富に含まれる揮発性物質がベスタにも存在しているのだろうと考えられる。

上記のようなゆるやかな衝突で地表に蓄えられた水和物に隕石が高速で落下すると、その熱によって水素が水となり、蒸発する。ジョンズ・ホプキンス大学のBrett Deneviさんらは、その蒸発の際に作られたと思われるくぼみ地形を調べた(画像2枚目以降)。

「かつて水が豊富に存在した火星でもこのような地形がたくさん見られますが、ベスタでこんなに多く見られるとは全く予想外の発見です。この結果は水和物がただ存在するというだけではなく、ベスタの地質や地形の成り立ちにも深くかかわっているという証拠です」(Deneviさん)。

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