赤外線全天観測で見つかった、数百万個もの超大質量ブラックホール候補

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【2012年9月3日 NASA

NASAの赤外線天文衛星WISEの観測データから、数百万個もの超大質量ブラックホールの候補と、多くの塵に覆われた高温の銀河約1000個が発見された。


全天画像と多数の超巨大ブラックホール候補の画像

WISEがとらえた全天画像と多数の超巨大ブラックホール候補(黄色い丸の中)。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/UCLA)

WISEは、2011年初めまでに2度にわたる全天観測を終えている。WISEの観測の眼は赤外線暗視カメラのように、可視光では見ることのできない天体をとらえ、数百万枚もの画像を取得した。そのデータは一般に公開されており、研究に利用されてさまざまな発見につながっている。

最新の研究成果の1つとしては、100億光年の範囲に点在する250万個もの活発な超巨大質量ブラックホール候補が観測されたことがある。そのうち3分の2が、これまで周囲の塵でさえぎられて見えなかった新発見のブラックホールである。WISEの眼は、ブラックホールに落ち込んでいく物質が作る塵の降着円盤から放たれる赤外線をとらえることができるのだ。NASAの赤外線観測衛星「スピッツァー」の追加観測から、超巨大質量ブラックホールがガスや塵を貪る銀河では、新しい星が爆発的に生み出されていることもわかった。

また別の研究では、観測史上もっとも明るい部類の銀河候補約1000個が発見された。その明るさは太陽の100兆倍以上もある。多くの塵に覆われているが、これもWISEによってその存在が明らかとなった。これらの銀河は「高温の塵に覆われた銀河」(Hot Dust-Obscured Galaxies)の頭文字をとって「ホットドッグ」(hot DOGs)と名づけられた。ハワイのW.M.ケック天文台などの観測で、発見された「ホットドッグ」のうち100個以上が100億光年かなたにあることが確認されている。

NASAジェット推進研究所のWISEプロジェクト研究員Peter Eisenhardt氏は「塵が多い上に激しい星形成が進む銀河はとても珍しく、WISEが全天観測を行わなければ発見できなかった」と話している。さらに同氏は「わたしたちが見ているのは、多くのひしめく星より先にブラックホールが形成された証拠です。つまり、鶏より卵が先かもしれないということです」と加えてコメントしている。

そのほか、WISEの観測データと米・カリフォルニア工科大学のサブミリ波天文台によるデータとを合わせた結果では、これらの銀河は赤外線で明るい他の銀河の2倍以上も明るい(=高温である)ことも示された。超巨大質量ブラックホールの活発な活動で、塵が熱せられているためではないかとも考えられている。

NASAジェット推進研究所のJingwen Wu氏は「わたしたちは、銀河の進化における新たな、そしてまれな段階を見ているのかもしれません」と話している。