「小惑星・彗星・流星会議2012」で高校生が発表参加

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【2012年6月19日 福岡県立小倉高校/愛知県立一宮高校/兵庫県立三田祥雲館高校】

5月中旬、太陽系小天体の国際会議としては最大規模の「小惑星・彗星・流星会議2012」が新潟で開催された。世界的な著名研究者らが集う中、ポスター発表に参加したのは日本の高校生たち。小惑星についての研究成果を英語で説明するなど、最初は戸惑いながらも貴重な体験を楽しんだ様子をレポートしていただいた。


井上哲秀さん(福岡県立小倉高校)、高村裕三朗さん(愛知県立一宮高校)、谷川智康さん(兵庫県立三田祥雲館高校)

ポスターセッションの様子

ポスターセッションの様子

ポスターセッションの様子

発表ポスターを前に、各国から訪れた研究者らに説明。クリックで拡大

発表を行った生徒たち

発表を行った生徒たち。クリックで拡大

5月16日から20日に新潟コンベンションセンター「朱鷺メッセ」で開催された国際会議「小惑星・彗星・流星会議2012」(以下ACM)で、世界の研究者と共に日本の高校生が参加しました。小倉高校(福岡)のスーパーサイエンスハイスクール(注1)のプログラム「小惑星の共同研究」に参加した同校科学部、一宮高校地学部(愛知)、三田祥雲館高校天文部(兵庫)の3校の生徒達です。3校は昨年秋に国立天文台三鷹キャンパスで開催された「ライトカーブ研究会」でも発表を行いましたが、その際にACMの組織委員会委員長を務める佐々木晶教授からお誘いいただいたのがきっかけでした。

生徒達が参加したのは19日(土)午後のポスターセッションです。準備期間中には新入生の勧誘や21日の金環日食観測の準備もあり、生徒はかなり疲れた状態で当日を迎えました。

発表を前に、午前の口頭セッションでも生徒たちが紹介されることになりました。会場となる巨大なメインホールに入ると200〜300人もの聴衆を前に発表が行われていました。内容が難しいうえに英語のスピードも速く、なかなか内容はつかめませんでした。映画の1場面のような会場の雰囲気に生徒の緊張も高まっていきます。セッションの最後、3校の生徒は壇上に上がって紹介を受け、大きな拍手で歓迎されました。

昼食をはさんで発表練習をした後、いよいよポスター発表の時間です。発表のタイトルは別表の通りです。各校とも普段から取り組んできた研究の成果を英語のポスターにまとめ、練習に励んできました。

事前に紹介されたおかげで、多くの研究者が生徒のポスターを訪れてくれました。さすがACMだけあって、David Asher博士やRichard P. Binzel博士など各分野を代表する先生方の顔が見えます。それらの先生方に向かって、生徒が英語でプレゼンテーションしているのは何か不思議な光景でした。

先生方が温かく聞いてくださることもあり、回を重ねるごとに生徒達の発表も乗ってきた様子で、質問にも笑顔で答える余裕が出てきました。始まる前は緊張して堅くなっていた生徒の表情を見て、通訳を必要とする場面もあるのかと心配しましたが、杞憂に終わりました。約1時間半のポスターセッションの時間を終え、心地よい興奮の中、会場を後にすることができました。

今回ACMでの研究発表を記念して、小惑星の名前をいただいたことも非常にありがたかったのですが(注2)、何物にも負けない大きな自信が生徒の心に残った事が最大の成果ではないかと思っています。参加者の皆様からも好評をいただいたようで、今後の活動の大きな励みとなります。最後になりましたが、ご支援、ご協力をいただきました多くの皆様、本当にありがとうございました。(報告:谷川さん)

学校名:
小倉高校
発表タイトルと内容:
「Inspection of Asteroid's Shape with the Clay Model」
本年度は、短期間でライトカーブの変化が起こる小惑星(584) Semiramisの形状決定を試みた。3か月で20夜を越えるライトカーブを得た後に、粘土モデルの再現実験では小惑星・太陽・地球の位置関係を再現した上で、粘土モデルによるライトカーブの再現を行った。
感想:
最初は戸惑ったが、慣れてくると何とか相手の言っている内容を聞き取ることができました。こちらの研究内容は、発表用のポスターに加えて、実験の様子の写真を使ったり、粘土モデルを使ったりする中で伝えることができました。さらに、私たちの粘土モデルを使った手法に対して、コンピュータグラフィックには無い長所があることを教えていただき、この手法での研究を続けて欲しいとアドバイスを頂きました。私たちの手法が海外の研究者から評価を頂いたことは、大変価値があることだと感じました。
学校名:
一宮高校
発表タイトルと内容:
「Analysis from Stellar Occultation and Light Curve Observation of (582) Olympia」
私達は小惑星の立体形状を2つの観測を用いて推測している。1つは小惑星・恒星間での掩蔽現象の観測で、観測した減光時間を元に小惑星の断面図を算出することができる。もう1つは測光観測で、小惑星のライトカーブを求め、自転周期と投影面積比がわかる。この2つを合わせて小惑星の立体形状を算出する。
感想:
まず何よりも自分の英語力の低さを痛感しました。聞き返すことが多くスムーズに話すことはできませんでした。また最初は英語で発表することに消極的でなかなか話すことができませんでした。しかし途中から、「こんな機会はない!楽しもう!」と積極的に発表することができました。
学校名:
三田祥雲館
発表タイトルと内容:
「Photometric Observations of Comet C/2009 P1 (Garradd)」
2009P1ギャラッド彗星を昨年の夏から秋にかけ多色測光を行った結果を報告。V、B、R、Iバンドで行った測光観測から、V-Iの結果を用いて近日点に近づくにつれVバンド(ガス成分)が明るくなっていく様子を、短周期彗星の結果と比較しながら明らかにした。
感想:
始まる前はポスターを置いて逃げ出したいような気持になりましたが、いざポスターセッションが始まると無我夢中で説明していました。終わってみるとすごい舞台に立てた自分が信じられなくて今も夢のような気持ちです。

注1:「スーパーサイエンスハイスクール」(SSH) 科学技術や理科・数学教育を重点的に行うとして文部科学省が指定した高校。

注2:小惑星に命名 今回のACMで研究発表した3校の名前が小惑星に命名された。(15526) Kokura、(19853) Ichinomiya、(15552) Sandashounkanの3つ