100億年前の銀河で星生成を邪魔するブラックホール

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【2012年5月23日 NASA

赤外線天文衛星「ハーシェル」の観測から、最大級に活発なブラックホールを中心に擁する銀河では、作られる星の数が少ない傾向にあることがわかった。近くの銀河ではなく、100億光年前後かなたの宇宙においてこうした結果が得られたのは初めてのことだ。


活動銀河核の想像図

活動銀河核の想像図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

多くの大型銀河の中心には、太陽の数百万倍もの巨大な質量を持つブラックホールが存在する。周囲のガスがブラックホールの重力により高速で吸い寄せられて加熱され、膨大なエネルギーが放射される。こうした活動銀河核(AGN)が星生成の邪魔をすることは、比較的近くにある銀河の研究から知られていた。活動銀河核の放射が、新しい星の材料となる冷たいガスを吹き飛ばしてしまうのだ。

だが、こうしたことがわかっているのは宇宙の歴史においてほんの一時期だけのことで、活動銀河核と星生成の関連性がはっきり証明されているわけではない。そこでイギリスのMathew Page氏らは、星生成がもっとも活発だった80〜120億年前の時期を調査した。今の10倍ものペースで星が作られた当時の銀河は、天の川銀河とはけた違いに明るかった。

今回の研究では65個の銀河について、衛星「ハーシェル」の遠赤外線データと衛星「チャンドラ」のX線データを照合した。遠赤外線データは星生成のペース、X線データは活動銀河核の活発さの目安となるため、関連性を調べることができる。

その結果、活動銀河核がそれほど活発でない場合はブラックホールの明るさ(銀河核の活発さ)と星生成のペースは共に増加するが、最大級に活発なブラックホールになると、私たちの近くにある銀河と同じように星生成のペースは抑制されることがわかった。流れ込むガスが新しく生まれる星やブラックホールの“燃料”となるが、一定の量を超えてブラックホールに供給されると、そのブラックホールからの放射が星生成を妨げるようだ。

「超大質量ブラックホールの活動と星生成との関連性がわかった今、その関連が働くプロセスについてもっと詳しく知りたいですね。非常に活発な中心核を持つ銀河の形成当初から星生成が抑制されるのか、それとも、すべての活動銀河核は最終的に星生成を抑制してしまうが、とりわけ活発だとそれが速やかに起こるというだけなのか、といったことです」(ハーシェル研究員のBill Danchi氏)。