東北各地や長野県栄村など小惑星名に 復興への願いこめて

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【2012年5月10日 国立天文台

東日本大震災からの復興を願い、新しく命名された小惑星に東北各地や長野県栄村など被災地の名前が多数付けられた。16日から新潟で開催される天文学の国際会議がきっかけとなったもので、先ごろ国際天文学連合で承認された。


小惑星「会津」

小惑星「会津」。クリックで拡大(提供:国立天文台、撮影:石垣島天文台、以下同)

小惑星「宮城」

小惑星「宮城」。クリックで拡大

国際天文学連合は、先ごろ発行した小惑星回報(MPC:Minor Planet Circular)を通じて、新たに承認された小惑星の名前を公表した。今回は日本にゆかりの深い名前、特に東日本大震災で被害が大きかった地名(東日本大震災災害救助法適用地域に基づく)が多数付けられた。復興を応援する意図で被災地名を小惑星名に命名した例は、今年3月に承認された「Tohoku」(東北)があるが、一度にこれほど多数の命名がされたのは初めてのことだ(地名ではないが4月には「Daishinsai」も命名されている)。

承認された被災地名一覧は以下の通り。

小惑星名由来
(14701) Aizu会津(福島)
(19534) Miyagi宮城
(19691) Iwate岩手
(19701) Aomori青森
(19713) Ibaraki茨城
(19731) Tochigi栃木
(20613) Chibaken千葉県
(21966) Hamadori浜通り(福島)
(22719) Nakadori中通り(福島)
(22745) Rikuzentakata陸前高田(岩手県)
(22885) Sakaemura栄村(長野県)
(22914) Tsunanmachi津南町(新潟県)

小惑星の名前は伝統的に、その小惑星を発見し、その軌道を決めるのに最も貢献する観測を行った個人あるいはグループに命名提案権が与えられ、提案された名前について、国際天文学連合の第三部会の下にある小天体命名作業部会(日本からは中野主一氏がメンバー)で審査を行う。命名提案権を持つ個人やグループが自発的に名前を考えて提案する場合がほとんどだが、日本の小惑星探査機「はやぶさ」が訪れた小惑星イトカワのように、命名提案権を持つグループと関連研究者とが相談しながら、適切な名前を提案する場合もある。

今回、日本にゆかりの深い名前が多数命名されたのは、今月16日から20日まで新潟市の朱鷺(とき)メッセで開催される国際会議「小惑星・彗星・流星2012」がきっかけとなっている。太陽系小天体の研究者が集う国際会議としては最大規模のもので、当初は2011年7月開催予定だったが、震災および原発事故の影響で中止となっていた。組織委員会の中では、他の国で開催すべきとの声もあったが、日本を応援する意味でも、延期して日本で開催すべきであるとの意見も強く、今年2012年の開催となった。

今回命名承認された中には被災地名のほか、探査機「はやぶさ」関係者などこの分野で活躍する日本やアジアの研究者、中央アジアの天文台、さらに今会議で研究発表を行う高校生の所属校(小倉、一宮、三田祥雲館)にちなんだ名前も含まれている。

今回承認された小惑星はすべて、米アリゾナ州フラッグスタッフにあるローウェル天文台・近地球小天体探索プロジェクト(LONEOS)により発見されたものだ。LONEOSは1993年から始まった近地球小天体を探索するプロジェクトで、今回の命名は全てローウェル天文台のプロジェクトチームが国際天文学連合へ提案したことになっている。


小惑星の方向

各小惑星が今年観測できるおおよその日時と方向をステラナビゲータでシミュレーション。クリックで拡大

命名された小惑星を天体シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」で表示することができます。[ツール]メニューから[データ更新]を行ったあと、[天体]メニュー→[小惑星]ダイアログで表示を設定してください。

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