すばるが写した「長方形銀河」の秘密

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【2012年4月5日 国立天文台

銀河というと渦巻き円盤や楕円、あるいは不規則な形をしていると認識されていたが、すばる望遠鏡による観測で、今までとの常識とは異なる「長方形銀河」の姿が映し出された。


「長方形銀河」LEDA 074886

すばる望遠鏡で撮影された「長方形銀河」LEDA 074886 の擬似カラー画像。中心部のコントラストは、内側の円盤構造が引き立つように調整されている。クリックで拡大(提供:スウィンバーン工科大学)

オーストラリアの研究者を中心とする研究チームが、今まで観測されたことのない「長方形銀河」を発見した。長方形銀河LEDA 074886が見つかったのは、ハワイにあるすばる望遠鏡を用いてエリダヌス座の方向7000万年かなたの銀河「NGC 1407」の周囲にある球状星団を観測していたときのことだ。

「見つけたときは笑ってしまうほど驚きました。こんな銀河、存在するはずがないと思ったのですから」(スウィンバーン工科大学のAlister Graham氏)。

天の川銀河の近傍に存在する銀河のほとんどは、渦巻き円盤型や楕円型、不規則型である。一方、今回観測されたLEDA 074886の姿はまるでエメラルドカットを施した宝石のような長方形だ。研究チームが元々狙っていた観測対象ではなかったが、すばる望遠鏡ならではの広視野観測で、この不思議な形の銀河も一緒に映し出された。LEDA 074886は天の川銀河に比べて約50分の1ほどしか星がない矮小銀河であるため、これまでその不思議な形が気づかれなかったようだ。

LEDA 074886の形について研究チームは、厚みのある円盤状の銀河を横方向(エッジオン)から見ているために長方形にみえているのではないかと考えている。

「この銀河は2つの渦巻銀河の衝突でできた可能性があります。衝突する銀河の中に元々あった星が長方形の対角線上にまき散らされた一方で、ガスは中央面に沈み、そこで新たに星が作られたことで、結果としてこのような形になったのではないでしょうか」(同大学のDuncan Forbes氏)。

「様々な銀河の進化を理解する上では、星生成を伴う場合の進化と伴わない場合の進化、両方のシミュレーションで得られた知見を組み合わせて考えることが大事だということですね」(Graham氏)。

将来、もし天の川銀河が推測通り数十億年後にアンドロメダ座大銀河と衝突したならば、我々も四角い銀河の住人になるかもしれない。

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