探査機ボイジャー、太陽圏外からの「向かい風」を初検出

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【2011年12月14日 NASA

NASAの探査機「ボイジャー1号」が太陽系の果ての新たな領域に入ったことがわかった。この領域では太陽圏から外向きに出ていく粒子だけでなく内向きに入ってくる粒子も観測されており、「よどみ」のようなものが形成されている領域であると考えられる。


「ボイジャー」の現在地と太陽圏の端

「ボイジャー」は現在太陽から178億kmのところにいる。現在いる「よどみ」(stagnation)は太陽から169億kmのところに内側の境目があることがわかっている。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

この新しい領域では太陽圏外に向かう荷電粒子の流れはゆるやかになり、太陽の磁場の影響も小さく、高エネルギーの粒子は星間空間へと漏れ出ているようだ。ボイジャー1号は太陽系の磁気バブル(参照:2011/6/13「太陽系の果ては磁気バブルで覆われている?」)に覆われた一番外側の領域の中で、「よどみ」のようなところにいるようだ。

ボイジャー1号は2010年4月に太陽風の外向きの速度が0になったのを観測しており、新しい領域に入ったと考えられている。境界にぶつかった風が横向きに流れているのかどうかを探るため、探査機の向きを変えて測定した(参照:2011/3/10「ボイジャー1号、21年ぶりの向き変更で太陽風を測定」)ところ、別方向にも風はなく、無風地帯であることがわかった。

2010年中ごろまでは一定だった荷電粒子の強度がその後は低下しており、太陽圏の外に粒子が漏れ出ていると考えられる。粒子の総量で見ると、現在観測されるのは過去5年に観測された量のおよそ半分しかないことがわかった。

同時に、太陽圏外からやってきた高エネルギー電子が急激に強くなっているのも観測されている。どうやらボイジャーは、着実に太陽圏外に近づいていると考えてよさそうだ。

ボイジャーの低エネルギー荷電粒子観測装置の研究員Rob Decker氏は、「荷電粒子の『向かい風』が初めて観測され、現在は明らかに全く新しい領域を航行していると言えます。科学者はこのような“よどみ”を形成する層がある可能性をかつて指摘していましたが、今はじめてその存在が確認できたのです」と語る。

ボイジャー1号は現在、太陽から178億km離れたところにいるが、まだ星間空間には出ていない。最新のデータでは磁力線の方向に変化はなく、磁気バブルが取り巻く太陽圏の中にいるようだ。いつごろ太陽圏を脱出するのか、データからはっきりとはわからないが、数か月から数年以内と考えられる。


ボイジャー1号2号の位置と航路

天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、ボイジャー1号、2号やパイオニア10号、「はやぶさ」など、主な探査機15機の設定日時における位置や航路を表示することができます。