銀河ごとに違う、星の材料のリサイクル事情

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2011年11月22日 HubbleSite

銀河の中では、星の材料となるガスを再利用することで数十億年にもわたって新しい星が生まれつづけることが、観測により示された。同時に、星形成が爆発的な銀河では残っていたガスが吹き飛ばされて星形成の勢いを止めてしまうことも、ハッブル宇宙望遠鏡の観測によってわかった。


クエーサーを用いたハローの観測方法

銀河の中心付近の円盤部と、その周りに広がる球状のハロー部。遠方銀河の中心で強烈な光を放つ天体「クエーサー」をハローごしに観測することで、ハローに含まれるガスの種類や量を測定している。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and A. Feild (STScI)、以下同)

星形成が激しい銀河とそうでない銀河の比較

左は星形成の激しい銀河を表しており、矢印のようにガスは銀河の外へと逃げてしまう。一方、天の川銀河のような右の渦巻銀河では、ハローのガスの一部を星形成のために再利用できている。クリックで拡大

これまでの銀河の研究で、銀河の円盤部を球状に取りかこむ「ハロー」と呼ばれる部分にあるガスが、銀河の色や形を左右していることがわかっている。銀河がどうやって現在観測されるようなものになるのかを知るには、ガスから星が生まれ反対に星からガスが放出されるという銀河内での複雑な循環プロセスを解き明かすことが必要になる。

この謎に取り組んだのが、米宇宙望遠鏡科学研究所のJason Tumlinson氏、米ノートルダム大学のNicolas Lehner氏、マサチューセッツ大学アマースト校のTodd Tripp氏で、それぞれの研究論文3本が発表された。

一連の研究では、天の川銀河を取り囲む巨大なハローに太陽1億個を作れるだけのガス雲があり、それが星の材料として円盤部に供給されていることが、遠方の恒星の観測から示された。銀河円盤に向かって降り積もるこのガスには、銀河内での星形成や新星・超新星爆発によって絶えずハローに戻されるものもあれば、銀河形成以来初めて降ってくるものもある。天の川銀河では1年に太陽1個分くらいの割合で星が誕生しているが、もう10億年はこうしたガスの再利用によって星を作りつづけることができると考えられる。

また別の成果として、星形成が活発な銀河は高温ガスのハローが取り囲んでいることもわかった。このようなハローは円盤部から45万光年も広がっているにもかかわらず、恒星の活動で作られる重元素(水素やヘリウムよりも重い元素のことで、酸素や炭素なども含まれる)に富んでいる。こういった星形成の激しい銀河では、重元素が円盤部に戻らずハローに放出されているため、重元素を材料として作られる惑星や生命を作るのも遅くなってしまうと考えられるだろう。

さらに、1年間に太陽数百個分という活発なペースで星を生み出す銀河では、200万度のガスが時速約300万kmという速度で銀河の外に流出してしまうことも示された。銀河を脱出する高温プラズマ風の存在はこれまでにも知られていたが、今回の観測で、大量のガスが予想よりずっと遠くまで広がることが明らかになった。ゆっくり流れるガスは銀河の中にとどまり、リサイクルされて再び星の材料となる。