光る銀河核が「宇宙のものさし」の新たな目盛に

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【2011年9月29日 ニールス・ボーア研究所

デンマークの研究グループから、遠方銀河の光る中心核までの距離を求める手法が発表された。宇宙の距離を測る基準として、120億光年以上かなたをカバーする新たな天体が加わったことになる。


活動銀河核のイメージ図

活動銀河核のイメージ図。銀河中心核にある超大質量ブラックホールから強力なエネルギーが放射されている(提供:Niels Bohr Institute)

宇宙の性質を理解するために、天体までの距離を知ることは非常に重要だ。その基準となるものとして、ケフェイド(ケフェウス座δ星型変光星)やIa型超新星などがある。いずれも、一定の要素からわかる真の明るさと見かけの明るさとの相違から、その天体までの距離を割り出せるというものだ。

このたび、ニールス・ボーア研究所のDarach Watson氏らが、新たな基準として「活動銀河核(AGN)」を利用した距離測定に初めて成功したと発表した。

AGNは銀河中心にある超大質量ブラックホールが活発化した天体で、銀河全体をしのぐほどの明るさを持つ。遠くても非常に明るく見えるものもあるため、これまで40年にもわたって距離測定法が研究されてきた。

ブラックホールに吸い込まれる周囲のガス雲の大きさとAGNの真の明るさに関連性があることは以前から知られていた。Watson氏らは、別の目的で行われたガス雲の大きさの測定結果が、AGNの明るさを見積もるのに十分な精度であることを知り、距離測定に活かすことにした。

38個のAGNのサンプルで検証した結果、他の基準よりもずっと遠い、120億光年以上かなたまでの距離測定が可能となった。これは暗黒エネルギーやその他の重力理論を検証するのに有用な領域だが、これまでは、天体からの光の波長が伸びる「赤方偏移」しか距離を測定するすべがなかった。また、AGNによる距離測定には、繰り返し観測できるため測定値の精度を高めていきやすいというメリットもある。

ケフェイドによる距離測定は、宇宙が膨張していることを明らかにした。Ia型超新星では、謎の「暗黒エネルギー」によりその膨張が加速していることがわかった。初期宇宙までさかのぼれるものさしを手に入れた今、どんな発見が私たちを待ち受けているのか、大いに期待されるところだ。