西村さんがりゅう座に矮新星を、中村さんがさそり座に新星を発見

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【2011年9月12日 VSOLJニュース(278/279)】

9月5日、静岡県の西村栄男さんがりゅう座に矮新星を発見した。6日には、中村祐二さんがさそり座の新星を独立発見した。


VSOLJニュース(278)より(9月9日)

著者:大島誠人さん(京大理)

節電のためいつもより暑さが体にこたえる夏も終わりつつありますが、そんな中また新たに明るい矮新星がりゅう座に発見されました。

発見したのは、新天体の捜索を積極的に行っている静岡県の西村栄男(にしむらひでお)さんです。西村さんは捜索観測中、9月5.529日(世界時)に得られた画像の中から11.8等(CCDノーフィルター)の新天体を発見しました。新天体の位置が20等の天体に同定されることから、これは変光範囲が8等前後の増光天体であろうと考えられました。

この程度の増光範囲を持つ天体としては、増光範囲の広い矮新星が疑われます。この発見を受けて茨城県の清田誠一郎氏が多色測光観測を行った結果、この新天体が比較的青い天体であり、新星であるより矮新星である可能性が高いことが示されました。

一方、岡山県の藤井貢さんによる分光観測では、水素の輝線が見られるもののあまり幅広いものでないことなどから、やはりこの天体は矮新星の特徴を示していると考えられます。

その後、P.ダボフスキー氏(スロバキア)やG.マシ氏(イタリア)氏による連続測光観測から、0.1等程度の小さな幅の変動が見られることが報告されました。このことから、この天体は矮新星の中でも特に増光幅が広いサブグループである「いて座WZ型矮新星」の天体であり、現在スーパーハンプと呼ばれる変動が発達しつつある状態にあるのだろうと考えられます。

この天体の詳しい位置は、以下のとおりです。

  赤経  18時42分28.1秒
  赤緯 +48度37分42  秒 (2000.0年分点)
  りゅう座の矮新星の周辺星図

新天体がいて座WZ型矮新星である場合、1ヶ月程度この増光は続くと考えられます。光度としても12-13等前後の時期が長く続くと思われますから、中口径の望遠鏡をお持ちの方はその姿をとらえられることでしょう。


VSOLJニュース(279)より(9月10日)

著者:前原裕之さん(京都大学花山天文台)

さそり座の新星の確認画像

さそり座の新星の確認画像。クリックで拡大(撮影:清田誠一郎さん)

1年で最も暑い時期が過ぎ、夏の星座も夜の早い時間に西の空に移るようになってきました。この夏にはさそり座デルタ星(ジュバ)が1等級に増光して話題となりましたが(vsolj-news 273:天文ニュースさそり座のジュバが増光中!)、そのさそり座はこの時期には日本からは夕方に南西の低い空に見えています。

さそり座のアンタレスから南に15度ほど、日本の本州付近からは南中時でもおよそ15度ほどの高度にしかならない場所に新星が発見されました。発見したのは三重県亀山市の中村祐二(なかむらゆうじ)さんとオーストラリアのJohn Seachさんで、今年さそり座に発見された新星としては、さそり座V1312(vsolj-news 271:さそり座に新星が出現)に次いて2個目となります。

Seachさんは6.37日(世界時、以下同)に50mmレンズで撮影した画像から、中村さんは9月6.431日に150mmレンズで撮影した画像から、それぞれ独立に9等台の新天体を発見しました。この天体は茨城県の清田誠一郎さんや千葉県の野口敏秀さん、筆者など日本やオーストラリア、イタリアの観測者によって確認されました。この天体の位置は以下のとおりです(E. Guidoさん他による観測)。

  赤経  16時36分 44.29秒
  赤緯 -41度32分 37.7 秒
  さそり座の新星の周辺星図

この天体の分光観測は、京都産業大学神山天文台の口径1.3m荒木望遠鏡とチリのセロ・トロロ・インターアメリカン天文台にある口径1.5m SMARTS望遠鏡で行われました。その結果、幅の広い水素のバルマー系列の輝線や、1階電離した(電子を1つ失った)鉄の輝線がみられることから、この天体が新星であることが判明しました。

この新星の位置には15等ほどの天体が過去の写真に写っており、この天体が爆発したものだとすると、増光幅は6等ほどしかありません。これは通常の古典新星としては非常に小さく、反復新星(再発新星、回帰新星などとも呼ばれる)のへびつかい座RS(vsolj-news 150:天文ニュース反復新星「へびつかい座RS」の21年ぶりの増光を愛媛の成見さん、群馬の金井さんが検出)と同程度です。

また、SMARTS望遠鏡の分光観測の結果からも、スペクトルが反復新星の爆発初期のものと似ていると指摘されており、今後の光度やスペクトルの観測に加えて、過去に撮影された写真や画像の調査も必要と言えます。


りゅう座の矮新星、さそり座の新星の位置

これらの天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後、「データ更新」を行ってください。

また、新しいデータや番組を入手できる「コンテンツ・ライブラリ」では、新星をわかりやすく×印で表示するための「新星(マークで表示)」ファイルも公開しています。あわせてお楽しみください。

〈参照〉

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