すばる望遠鏡、ナスミス焦点での共同利用観測を再開

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【2011年7月26日 すばる望遠鏡

7月2日に起こった冷却液漏れによる障害からの復旧を進めている「すばる望遠鏡」では、直接影響のなかったナスミス焦点での共同利用観測が7月22日に再開された。冷却液を浴びた主鏡についても、洗浄後、反射率に問題のないことが確認されている。


すばる望遠鏡

すばる望遠鏡の概略図。クリックで拡大(提供:META Corporation Japan #150132)

すばる望遠鏡は7月2日(米・ハワイ時間。以下同)に起こった冷却液漏れの障害からの復旧を進めており、直接影響がなかったナスミス焦点(画像参照)での共同利用観測を7月22日に再開した。ナスミス焦点では、高分散分光器(HDS)(注1)、波面補償光学装置(AO188)(注2)、近赤外線分光撮像装置(IRCS)(注3)、高コントラストコロナグラフ撮像装置(HiCIAO)(注4)を用いた観測を行っている。

冷却液漏れの影響を受けた主鏡については、洗浄後に反射率の測定を進め、問題のないレベルになっていることが確認された。

今回の冷却液漏れが起こったのは、望遠鏡最上部にある主焦点部(周辺光学系システムと主焦点カメラを含むユニット)であることがわかった。障害の原因と発生の経緯については引き続き調査中で、現在は該当の主焦点部ユニットを望遠鏡から完全に取り外し、冷却液漏れが再発しない状態になっている。当面の共同利用観測は、冷却液を使わない副鏡を主焦点部にとりつけ、ナスミス焦点の観測装置を用いて行う。

主焦点カメラ(Suprime-Cam)については、原因の解明と対策を行ったうえで観測を再開する。また、冷却液漏れの影響を受けたカセグレン焦点についても、復旧次第、微光天体分光撮像装置(FOCAS)などによる観測を再開する予定となっている。

注1:「高分散分光器(HDS)」 可視光を波長ごとに細かく分けて観測する装置。銀河系初期に生まれた星の組成を調べたり、星の視線速度変化を詳細に測って太陽系外惑星を探査したりするのに用いられる。

注2:「波面補償光学装置(AO188)」 形状を制御できる鏡を用いて大気のゆらぎによる星像の乱れを補正し、天体の微細な構造を見分けることを可能にする装置。

注3:「近赤外線分光撮像装置(IRCS)」 波面補償光学装置を生かした高い解像力と感度による撮像観測・分光観測を行う装置。星・惑星系形成から遠方銀河まで幅広く利用される。

注4:「高コントラストコロナグラフ撮像装置(HiCIAO)」 明るい天体の光を隠し、そのすぐ近くにある暗い天体や構造を写し出すことができる装置。太陽系外惑星の直接撮像による探査や、若い星のまわりの円盤構造の研究に用いられる。