木星の大移動が火星を小さくした?

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【2011年6月9日 NASA

シミュレーションによって、木星は太陽系形成初期に一度太陽に近づいた後、再び離れて現在の軌道に落ち着いた可能性があることがわかった。惑星が移動することはこれまでも指摘されてきたが、この結果では火星の質量が地球や金星と比べて小さいことも説明が可能だとしている。


(原始太陽系円盤の想像図)

原始太陽系円盤の想像図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

(現在の木星と土星の画像)

現在の木星と土星。クリックで拡大(提供:NASA/GSFC)

計算機の発達により、太陽系の惑星がどのように形成されたのかというシミュレーションが活発に行われている。今回発表されたのは、木星は一度火星軌道くらいまで太陽に近づいた後、現在の軌道に落ち着いたというシミュレーション結果だ。

現在、木星は太陽から5.2天文単位(1天文単位は地球と太陽の距離=約1億5000万km)の軌道を公転しているが、今回の結果によれば、木星は最初太陽から3.5天文単位のところで形成される。その後、周辺のガスを取り込みながら太陽へと落ち込んで行き、現在の火星軌道にあたる1.5天文単位のところで停止する。このとき火星はまだ形成されていない。

なぜ木星の動きが止まるのか。その鍵は土星にある。木星に少し遅れて土星が形成され、同じように太陽系の内側へと落ち込み、木星と土星が十分近くなったときに重力相互作用を起こす。このときに惑星は移動する向きを変え、今度は外側へと動き始める。そして、木星は5.2天文単位、土星は7天文単位のところまで移動するというのだ。土星はその後、別の力の作用を経て、現在の軌道である9.5天文単位のところまで移動する。

このシミュレーション結果によれば、これまで謎であった、小惑星帯に乾いた岩石質のものと氷を含んだものが共存している理由がわかる。木星の移動は非常にゆっくりとしたものなので、激しく衝突したり、多くの天体が軌道の外に弾き飛ばされたりするようなことはない。木星が太陽に近づく際に小惑星帯の場所を内側から外側へと移動させ、同様に遠ざかった時に氷の小天体を外側から内側へと押しやったために、現在のように乾いた岩石質と氷を含んだものが小惑星帯に混在していると考えられる。

また木星の内側への移動は、小惑星帯だけではなく、火星の形成にも大きな影響を与えている。火星は地球や金星と比べて遠いところにあるため惑星の材料がたくさんあったにも関わらず、地球と比較してかなり小さな質量しか持っていない。

これは、木星が火星軌道に近づいた際に、その周辺にあった惑星の形成にちょうど良い質量の小天体をはじき飛ばしてしまったため、火星が十分成長できなかったためだと説明できる。より内側の軌道に位置している地球や金星は、木星の移動の影響を受けなかったのだろう。

さらに今回のモデルでは天王星や海王星も現在の軌道に近い場所に移動することがわかり、現在の太陽系の惑星形成を説明するのに非常に都合の良い結果となった。

系外惑星系では惑星の移動が起きていると言われているが、どうやら太陽系も例外ではなさそうである。