巨大ガス惑星の軌道からわかる、中心星に近づいた理由

【2010年12月21日 すばる望遠鏡

すばる望遠鏡による観測で、公転軌道が大きく傾いた系外惑星が2つ発見された。木星より小さい海王星サイズでのこのような発見は世界初のことで、中心星に極端に近い巨大ガス惑星の来し方を探るうえではずみとなることが期待される。


系外惑星HAT-P-11bの想像図

恒星HAT-P-11と、その惑星HAT-P-11bの想像図。地球の4.7倍の直径と25倍の質量を持つHAT-P-11bは、このサイズのものとしては初めて、大きく傾いて公転していることが証明された。クリックで拡大(提供:国立天文台)

太陽以外の恒星の周りを回る「系外惑星」は、1995年から今までに500個以上見つかっている。そのうちほとんどが「ホットジュピター」と呼ばれる、恒星のすぐそばを公転する木星サイズの巨大ガス惑星だ。恒星からある程度離れたところでしか形成されないはずの巨大惑星がどうやってこんなに近くまで来たのか、考えられている原因としては以下の3つがある。

  1. 惑星系が作られる途中に、原始惑星系円盤内のちりなどの物質との作用で中心星に近づいたため
  2. 原始惑星系円盤のちりが消えたあとに、巨大惑星同士が重力ではじき飛ばしあったため
  3. 外側にある別の巨大惑星、あるいは中心星の伴星の重力のため

(1)の場合は、中心星の自転軸に対して惑星の公転軌道は傾きがゼロになり、(2)と(3)の場合は、中心星の自転軸に対して惑星の公転軌道は大きく傾くことが理論上わかっている。このように、系外惑星の公転軌道を知ることで、巨大惑星がどのようにして中心星に近づいていったかがわかるわけだ。

今回、東京大学、国立天文台などの研究グループが、「XO-4」と「HAT-P-11」という2つの惑星系で、恒星の自転軸に対して大きく傾いた公転軌道を持つ惑星を発見した。その1つ、はくちょう座の方向約130光年先にある「HAT-P-11b」は、恒星の自転軸に対して約103度の傾きで(恒星の自転とは逆方向に77度の傾きで)中心星の周りを公転する海王星サイズの惑星だ。木星型より小さい、このサイズの惑星の軌道が大きく傾いている様子が確認されたのは世界で初めてのことで、すばる望遠鏡による高精度の観測で可能となったものだ。

近年、このように軌道が傾いた惑星が宇宙には意外とありふれていることがわかってきており、個々の結果を見る限りでは、その惑星たちが上記(2)あるいは(3)のケースによって中心星の近くに移動したことが示唆されている。今後、軌道の傾いた惑星の主要な移動メカニズムが(2)と(3)のどちらなのかを結論づけるためには、より多くの観測結果からの統計が必要であり、また「HAT-P-11b」のように小さな惑星の観測がより重要な役割を果たすと期待されている。


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