宇宙論分野に貢献したマイクロ波観測衛星「WMAP」観測終了

【2010年10月13日 NASA

NASAのマイクロ波観測衛星WMAPは、宇宙最古の光である宇宙マイクロ波背景放射の測定を2001年に開始、宇宙の歴史や構造に関する研究分野に大きな貢献を果たしてきたが、9年間続けてきた観測にピリオドを打つこととなった。


(WMAPの7年間のデータから描かれた全天マップの画像)

WMAPの7年間のデータから描かれた、137億年前の温度の「ゆらぎ」の全天マップ。温度のムラが種のようなものとなって、やがて銀河へと進化していったと考えられている。クリックで拡大(提供:NASA)

1992年、NASAの宇宙背景放射探査衛星COBEは、宇宙が誕生した直後に発せられたビッグバンの残光であり、現在は宇宙マイクロ背景放射として観測されるマイクロ波を初めて検出した。COBEの後継機であるWMAPは宇宙マイクロ背景放射の温度のわずかなゆらぎを精密に計測できるよう設計され、2001年に打ち上げられた。

そのWMAPは今年8月20日に最後の観測データを取得したあと、9月8日にエンジンの噴射を行ってこれまでの軌道から太陽のまわりを回るパーキング軌道に投入され、ミッションを終了した。

WMAPのミッションによって、137.5億歳という宇宙の年齢が明らかにされた。その誤差は1パーセントほどと考えられており、「宇宙の年齢をもっとも正確に計測した」としてギネス記録にも載っている。

またWMAPの観測データは、今日の宇宙を構成する物質のうちたった4.6パーセントが通常の原子であること、残る大部分は実体のわからない2つのものが占めていることを明らかにした。

そのうちの1つは、いまだ未検出で宇宙の23パーセントを占めるといわれているダークマターだ。もう1つのダークエネルギーは宇宙の72パーセントを占めており、WMAPがその存在を確認したが、重力とは逆に斥力を働かせるこのエネルギーの正体はいまだ不明である。

宇宙は誕生から1兆分の1秒後に急激な膨張の時期を迎えたと考えられている(インフレーション理論)が、WMAPはそのような膨張が起きたことを支持する精密な計測データを得て、インフレーション理論のシナリオ確立にも大きく寄与した。

米・ワシントンD.C.にあるNASA本部でWMAP計画の責任者をつとめているJaya Bapayee氏は「WMAPは、宇宙の基本的なパラメータに関する決定的な計測データを提供してくれました。今後も理解を深めるためにデータは活用され続けることでしょう」と話している。