原初の宇宙に満ちていた磁場を発見か

【2010年10月1日 UCLA

最新の研究で、地球の磁場の10の15乗分の1というきわめて微弱な磁場が深宇宙の銀河間に広がっていることが示された。このような磁場はビッグバンの直後から宇宙を満たしていた可能性があり、宇宙における磁場の起源解明につながるかもしれない。


(活動銀河核の想像図)

巨大ブラックホールに物質が落ち込むことによってガンマ線など高いエネルギーが放射されている活動銀河核の想像図(提供:NASA)

原初の宇宙に磁場が存在し、現在わたしたちが知っている成熟した銀河の磁場ももとは初期宇宙の微弱な“種”磁場から発達したのではないかと長い間考えられている。しかし、これまでにそのような深宇宙に広がる磁場を観測する方法はなく、計測が試みられたこともなかった。

米・カリフォルニア工科大学の物理学者 安藤真一郎氏と、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の宇宙物理学教授Alexander Kusenko氏は、NASAのフェルミ・ガンマ線天文衛星が撮影した170個の巨大ブラックホール画像が予想以上に鮮明でないことに気がついた。

その理由についてKusenko氏は「この宇宙はビッグバンのなごりである宇宙背景放射で満たされています。同時に銀河からの放射も存在します。銀河の中心にある巨大ブラックホールの活動で放出された高エネルギー光子が背景放射の光子と作用して電子と陽電子のペアになり、のちにそれらが再び作用を起こして光子のグループに変わるのです。このプロセス自体は画像をそれほどぼやけさせることはないのですが、小さな磁場であっても途中で電子と陽電子を偏向させるため、画像が不鮮明になるのです」と話している。

安藤氏とKusenko氏は、画像のぼやけ具合から磁場の強さを計算した。その結果、磁場は平均で地球の磁場の10の15乗分の1ほどであることが示された。この宇宙における最初の磁場はビッグバン直後に形成された可能性がある。この研究成果は宇宙における磁場の起源解明につながるかもしれない。