瀕死の白鳥が舞う ハッブルがとらえた原始惑星状星雲

【2010年7月15日 ESA

太陽程度の質量の星が一生の終わりにみせる美しい姿をハッブル宇宙望遠鏡(HST)がとらえた。鳥の羽のように見えるのは、中心の星から放出されているジェットの活動によって周囲のちりがくりぬかれるようにしてできた構造だと考えられている。この天体はすでに赤色巨星の段階を過ぎていて、このあと惑星状星雲となる。


(IRAS 19475+3119の画像)

IRAS 19475+3119。クリックで拡大(提供:ESA/Hubble and NASA)

太陽と同じくらいの質量の星が老いると、赤く膨らんだ星となる。星は、その赤色巨星と呼ばれる段階を終えると、表面から宇宙空間へと物質を放出し始め、周囲の空間はちりが豊富となる。この時、中心星の温度は比較的低いが、ちりは星からの光を反射して輝くようになる。また、あたたかいちりは、大量の赤外線を放射する。

はくちょう座の方向約1万5000光年の距離に位置する、興味深い形をした天体「IRAS 19475+3119」も、1983年に赤外線天文衛星IRAS(アイラス)によって(その赤外線放射が検出されて)発見された天体の1つである。

鳥の羽のような形は、IRAS 19475+3119から放出されるジェットの活動によって形成されたと考えられている。この天体の場合、ジェットが作る特徴が異なる角度に2つ存在していて、全体としては、さながら宇宙で羽ばたく鳥のように見える。この美しい姿が見られる期間は、天文学的なスケールで考えると、とても短い。

今後、中心星は物質を放出し続け、やがて高温の中心核が姿を現す。すると、その強力な紫外線放射によって周囲のガスが輝き、惑星状星雲が誕生する。IRAS 19475+3119のような、惑星状星雲の1つ前の段階にある天体を「原始惑星状星雲」という。ここでいう「惑星状」とは、とくに惑星との直接的な関連を示すものではなく、小口径の望遠鏡では天王星や海王星のような遠い惑星のような姿に見えたことに由来している。

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