米の高校生らによる「はやぶさ」大気圏突入の動画

【2010年6月28日 NASA Science News

米・マサチューセッツ州の高校生3名が、今月13日の「はやぶさ」の大気圏突入の観測に加わり、大型ジェット旅客機DC-8の機上から巨大な花火のように爆発するはやぶさを観測、その姿を動画におさめた。


(米の高校生がとらえた「はやぶさ」の動画から切り出した静止画)

米の高校生がとらえた「はやぶさ」の動画から切り出した静止画。クリックで拡大(提供:Hayabusa Re-entry Airborne Observing Campaign/Clay Center Observatory/NASA)

米・ マサチューセッツ州の高校で科学を教えるRon Dantowitz氏は、昨年のある日、3名の生徒(Dexter校のJames BreitmeyerさんとYiannis Karavasさん、そしてSouthfield校のBrigitte Bermanさん)に、小惑星探査機「はやぶさ」の大気圏再突入を大型ジェット機を使って観測すると想定した場合、どんな方法があるか、またどんなことを明らかにできるかについて計画を立てるよう話を持ちかけた。生徒たちは与えられた課題にどんな意味が隠されているのかもわからないまま、約6か月間をかけて観測の計画を立てた。

今年3月12日、生徒たちはDantowitz氏から次の言葉を聞かされて呆然とする。「計画が現実のものになる。君たちもいっしょにジェット機に乗り込むよ」。Dantowitz氏は、2つの高校(Dexter校とSouthfield校)が運営するクレイ・センター天文台の責任者であり、「はやぶさ」の大気圏突入を上空から観測するプロジェクトに高校生たちが参加できるようNASAから許可を得ていたのである。

Dantowitz氏と生徒たちは、6月の初めにオーストラリアへと飛んだ。その目的は、8か国約25名の研究者とともに大型ジェット旅客機DC-8に乗り込んで、高度約41000フィート(約12.5km)の上空から、時速約4万kmで大気圏へ突入する探査機「はやぶさ」の姿を追うことである。

当日のようすについて、生徒の一人James Breitmeyerさんは次のように話している。「最初、カメラの視野に入ってきた「はやぶさ」は小さな白い点でした。数秒間目で追っていましたが、突然オレンジ色の巨大な花火ようのような姿になって爆発し、破片が飛び散りました。その瞬間みんなから同時に『おおっ』と静かな感嘆の声があがりました」。

Breitmeyerさんはさらに、「本体が落下した後、無傷のカプセルの姿が見えました。カプセルはその後減速し、わたしたちの視界から消えて観測が終了、わたしたちは喜び合いました」と話している。

生徒たちがとらえた「はやぶさ」の大気圏突入のビデオは衛星を通じて世界中に配信された。また、米・エイムズ研究センターによって動画がインターネット上に投稿されると、ジェット機が着陸するまでのダウンロード数は10万回を超えた。

Dantowitz氏と生徒らは、そのほかにも可視光および分光観測も行った。得られたスペクトルは、地球の大気が「はやぶさ」の超高速度に反応していることを示し、また探査機本体がどのように崩壊したのかを明らかにした。

NASAの「はやぶさ」大気圏再突入観測ミッションの主任研究員Peter Jenniskens氏は「生徒たちがいなかったら、このようなデータを集めることはできませんでした。彼らの準備の良さに感心しました。彼らが私たちの後継者になってくれたらとてもうれしいです」と話している。

今後、3名の高校生は、他の生徒向けに分光器を使った授業を行うほか、数か月をかけてデータの分析も行う。分析結果が論文として学術専門誌上に発表されれば、学術論文の共著者に現役高校生が名を連ねることになるだろう。

なお、生徒らがとらえた「はやぶさ」の大気圏突入の動画は、以下リリース元で見ることができる。

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