ハレー彗星やヘール・ボップ彗星は他の星からやってきた?

【2010年6月17日 SwRI

ハレー彗星やヘール・ボップ彗星などが、太陽以外の恒星のまわりで形成された後に太陽の重力で捕獲された可能性が、コンピュータシミュレーションで示された。


(豪・サイディングスプリング天文台で撮影されたマックノート彗星(C/2006 P1)の画像)

豪・サイディングスプリング天文台で撮影されたマックノート彗星(C/2006 P1)。クリックで拡大(提供:R. H. McNaught, Siding Spring Observatory)

多くの人が知っている彗星といえば、ハレー彗星やヘール・ボップ彗星、近年では、2006年8月に発見され2007年の1月から2月にかけて迫力のある尾をたなびかせたたマックノート彗星(C/2006 P1)が記憶に新しい。

米・サウスウエスト研究所のHal Levison博士ら国際的な研究チームが行ったコンピュータシミュレーションによって、こういったオールトの雲を起源とする彗星が、もともと太陽とは別の恒星のまわりで形成されたという可能性が示唆された。

Levison氏らのシミュレーションモデルによって示された結果は次のようなものだ。太陽はもともと、高密度のガスと数百個もの星がひしめく星団の中で形成されたと考えられている。星団の星1つ1つの周囲には、かつてちりの円盤が存在し、そこで数多くの彗星が形成された。同じ円盤では巨大な惑星も誕生し、その重力の影響で、多くの彗星が放り出されて小さな独立した彗星の集まりとなった。

一方、太陽が生まれた星団自体は、高温の若い星によってガスが吹き飛ばされるという荒々しい最期を迎えた。その星団の消滅にともない、太陽の重力によって独立した彗星の集まりが捕らえられた、というのである。

研究チームが提唱するシナリオの証拠の1つに挙げられているのがオールトの雲である。オールトの雲は、厚みを持った球殻状に太陽系を取り巻いており、その広がりは、太陽系にもっとも近い恒星までの距離の半分にまで達している。これまで、オールトの雲の起源は、原始の太陽を取り巻いていたちりの円盤とされてきた。しかし、詳細なモデル計算によると、その円盤からははるかに薄い雲しか形成されず、別の起源でなければ説明ができないのだ。

研究チームでは、オールトの雲からやってきたと思われる彗星の9割以上について、その起源は太陽以外の恒星であるという結論に至っている。また、シミュレーションで示されたように、もし他の星のまわりで形成された彗星の集まりを太陽が捕獲していた場合、オールトの雲には、太陽の兄弟星を構成していた物質のサンプルが含まれている可能性がある。

研究チームの一員で、仏・コートダジュール天文台のRamon Brasser博士は「オールトの雲の形成は、過去60年もの間ずっと謎でした。わたしたちの研究によって、長年の謎が解決されるかもしれません」と話している。