「空飛ぶ天文台」SOFIAがファーストライト

【2010年6月3日 NASA

ジャンボジェット機に望遠鏡を搭載した「空中の天文台」SOFIAの飛行観測が初めて行われ、テスト観測の画像が公開された。「地上望遠鏡の簡便さと、天文衛星の観測能力をあわせもつ」観測施設として、今後の活躍が期待される。


(SOFIAの側面から見える望遠鏡の画像)

SOFIAの側面から見える望遠鏡(提供:NASA/Jim Ross)

(SOFIAで撮影した木星の画像)

可視光線で見た木星(左)と、SOFIAによる赤外線画像(右)。木星が誕生した時からあった内部の熱が放出されているようすがとらえられている。クリックで拡大(提供:Anthony Wesley)

(SOFIAで撮影したM82の画像)

SOFIAで撮影したM82の星形成領域(3つのうち1番左)。クリックで拡大(提供:N.A.Sharp/NOAO/AURA/NSF)

5月25日、アメリカのNASAとドイツのDLRが共同で開発した「赤外線天文学成層圏観測施設(SOFIA)」が、米カリフォルニア州のドライデン飛行研究センターから飛び立ち、8時間のファーストライト飛行を行った。

SOFIAは、ボーイング747-SPを改造した機体にドイツ製の2.5m反射望遠鏡を搭載しており、時速800kmで飛びながら望遠鏡を精密制御して観測を行う。

今回の飛行では高度約1万mまで上昇し、木星と、おおぐま座の銀河M82の赤外線画像を撮影した。撮影に使われたのは「FORCAST」と呼ばれる高感度赤外線カメラで、地上では水蒸気に邪魔されて何時間も露出が必要な撮影が、数分程度で可能となっている。

このフライトでの観測性能の評価は上々だったようだ。「飛行中の気流による影響など、観測の質をこれでほぼ把握できました。改善の余地はありますが、間違いなく期待以上ですね」(「大学宇宙研究協会(USRA)」主任科学顧問Eric Becklin氏)

このような、航空機による天文観測の歴史は1920年代にさかのぼる。最初は日食観測が主な目的だったが、観測技術の進化にともない、1960年代頃からは惑星観測など幅広く利用されるようになった。

SOFIAは世界最大の飛行観測施設として、今後「超高光度赤外線銀河(ULIRG)」や、天の川銀河内における星形成、惑星、彗星などの観測と研究で活躍する予定だ。