天の川銀河に新たに多くの星形成領域を発見

【2010年6月1日 NASANRAO

NASAの赤外線天文衛星スピッツァーとNSFVLA(超大型干渉電波望遠鏡)による天の川銀河のサーベイによって、これまで未発見だった星形成領域が多数発見され、そのうち25箇所は銀河系の中心から遠く離れた場所に存在していることが明らかになった。


(天の川銀河のイラスト)

天の川銀河のイラスト。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/R. Hurt (SSC-Caltech))

大航海時代の人々が新大陸発見とともに地図を作成したように、わたしたちの天の川銀河の構造も明らかになりつつあり、研究者はその地図作りを進めている。

天の川銀河の腕を描いた最新のイラスト(右図)には、複数ある天の川銀河の腕のうち、もっとも目立つ2本の腕(たて座-ケンタウルス腕とペルセウス腕)が見えており、これらの腕では若い星や年老いた星がひしめいている。また、2つの腕は、銀河系の中心にある棒状構造の端とつながっている。一方、その間にあるかすかな2本の腕(じょうぎ座腕といて座腕)は主にガスで満たされていて、目だった星形成は起きていない。また、「Far-3 kiloparsec arm(3キロパーセク腕)」(※)は、銀河系内のガスのサーベイを目的にした電波観測で発見され、2008年に新たに天の川銀河の地図に加わった。この腕は短く、銀河系中心の棒状構造に沿って存在している。

米・ボストン大学のThomas Bania氏らのチームによる研究で今回新たに発見された星形成領域は、このような天の川銀河の構造上で示せるような位置に分布していた。

星形成領域は、電離水素領域(HII領域)とも呼ばれ、若い大質量星からの強力な紫外線によって電離した水素が発光し、電波も発している。ちりやガスに隠されて可視光では見通せないため、観測には電波や赤外線が用いられる。

Bania氏らは、スピッツァーとVLAによる天の川銀河のサーベイから、電離水素領域の候補を探し出し、詳しい分析から各領域の位置を決定した。

その結果、天の川銀河の腕のうち、もっとも目立つ2本の腕(たて座―ケンタウルス腕とペルセウス腕)の中と、銀河系の中心にある棒状構造の端に、複数の星形成領域が集中している箇所を発見した。そのうち25箇所は、太陽系よりさらに遠い、銀河系の中心から離れた場所に存在する。

Bania氏は「天の川銀河全体の構造と、その中におけるこれらの星形成領域の分布には、明らかな関連があります。研究が進めば、星形成のプロセスを理解したり、天の川銀河の中心から離れた星形成現場の化学組成に関する理解が進むことでしょう」と話している。

※パーセクとは、天文学で使われる距離を表す単位。1パーセクは3.26光年。