「光るブラックホール」の活発化は、銀河同士の衝突がカギ

【2010年5月28日 NASA (1) (2)

NASAのガンマ線観測衛星「スウィフト」による観測で、活動銀河核(AGN)のうち合体中の銀河の割合が従来考えられていたよりもずっと高いことが示された。


(接触中の銀河と中心の活動銀河核)

接触中の銀河と中心の活動銀河核。撮影は米キットピーク国立天文台の2.1m望遠鏡。クリックで拡大(提供:NASA)

(2つの銀河の接触シミュレーション)

報告会のデモ動画より。2つの銀河が接触し、活動銀河核が明るく光るようすをシミュレーションしている。動画はSwift Black Hole Survey Media Telecon Visuals (NASA)で見ることができる(提供:Volker Springel and Tiziana Di Matteo - Max Planck Institute for Astrophysics, Lars Hernquist - Harvard Univ.)

銀河のなかには、その中心の巨大ブラックホール近くから激しくエネルギーが放出され、明るく輝いてみえるものがある。太陽の100億倍ものエネルギーを放射する「活動銀河核」と呼ばれるこのタイプの天体を、NASAのガンマ線観測衛星「スウィフト」はこれまでに260個発見してきた。

この発見は、「スウィフト」に搭載されているバースト警報望遠鏡(BAT)による硬X線(エネルギーの高いX線)観測でもたらされたものだ。活動銀河中心のブラックホールをとりまく厚いチリやガスは、紫外線、可視光線、(低エネルギーの)軟X線などの電磁波をブロックしてしまう。赤外線ならブラックホール付近の高温のチリを観測できるが、星形成領域との区別がつきにくい。「スウィフト」が観測した硬X線なら、チリやガスの壁を通り抜けて巨大ブラックホールを直接観測できるのである。

従来の観測によれば「活動銀河核のうち合体中の銀河は2パーセント程度」だったが、「スウィフト」よる精確な観測でこの数値が大幅にアップした。「スウィフト」が発見した活動銀河核のうち、25パーセントでは銀河同士が合体途上にあり、60パーセントは今後10億年以内に他の銀河と完全に合体するとみられている。銀河同士の激しい衝突によって銀河内のガスがかき混ぜられ、中心のブラックホールに流れ込む時のエネルギーで光を放っていることが証明されたのである。

活動銀河核(AGN

中心核から異常に強力な放射が観測される銀河の総称。光や電波、X線など各波長域でさまざまな特徴的放射が観測され、「クエーサー」「とかげ座BL型天体」などいくつかのタイプに分類される。これら活動銀河のエネルギー発生機構については謎の部分が多いが、多くは中心に巨大ブラックホールが存在し、これに流れ込む星間ガスの位置エネルギーの解放と、それに起因する爆発的エネルギー放出の結果ではないかと考えられている。(最新デジタル宇宙大百科より

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