金星探査機「あかつき」が地球を撮影

【2010年5月24日 JAXA(1)(2)

日本時間(以下同様)5月21日に打ち上げられた金星探査機「あかつき」は、太陽電池パネルの展開などを正常に行い、同日の午後8時50分ごろに搭載機器の状態確認を目的に約25万km離れた地球を撮影した。いっしょに打ち上げられた小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」も正常に動作しており、通信を開始した。


(中間赤外カメラ(LIR)による地球の画像)

中間赤外カメラ(LIR)による地球の画像におよその位置で世界地図を重ねたもの。クリックで拡大(提供:JAXA、以下同様)

((左)紫外線イメージャ(UVI)による地球の画像、(右)1μmカメラ(IR1)による地球の画像)

(左)紫外線イメージャ(UVI)による地球、(右)1μmカメラ(IR1)による地球(色はともに擬似カラー)。クリックで拡大

(「あかつき」が行う金星の大気観測のイメージ)

「あかつき」が行う金星の大気観測のイメージ。クリックで拡大

金星探査機「あかつき」は、5月21日6時58分22秒に打ち上げられた。同日16時40分に地上局によって電波が受信され、太陽電池パネルの展開などが正常に行われた。

「あかつき」には、5台のカメラと超高安定発振器(USO)が搭載されている。21日夜に、そのうちの中間赤外カメラ(LIR)、紫外線イメージャ(UVI)、1μm(マイクロメートル)カメラ(IR1)の3台が立ち上げられ、機器の状態を確認する目的で地球の撮影が実施された。

撮影時刻は21日20時50分ごろ。その際の「あかつき」と地球の距離は約25万km(地球〜月の約3分の2)で、「あかつき」から見た地球の視直径は約3度、地球を夜の方向からとらえている。

中間赤外カメラ(LIR)は、地球自身が放つ赤外放射をとらえるため、地球の夜側も見えている。画像の中央がオーストラリア大陸で、下方には冷たいため赤外放射の弱い南極大陸が暗く写っている。「あかつき」はこのカメラを使い、金星の雲の温度分布を映像化して、雲頂のでこぼこやその変化から風を調べる。

また、紫外線イメージャ(UVI)は、雲の形成に関わる化学物質の分布をとらえるとともに、その変動から金星に吹く風を調べる。

さらに1μm(マイクロメートル)カメラ(IR1)は、可視光では見えない低高度の雲や微量ガスの分布を映像化し、雲が時間とともに移動する様子から風の分布を明らかにする。また、赤外線による地表面の撮影によって、鉱物組成の分布や活火山についても調べる。

「あかつき」から地球に届いたこれらの画像から、3機器の状態は正常と判断された。残る2μmカメラ(IR2)と雷・大気光カメラ(LAC)および超高安定発振器(USO)の立ち上げは後日に行われる予定だ。

金星では「スーパーローテーション(超回転)」と呼ばれる秒速100mの風が吹いている。そのメカニズムの解明をはじめ、雲がどのように作られるのか、活火山はあるのかなどを調べることが、「あかつき」の重要な探査課題となっている。今後「あかつき」は姿勢軌道制御を行いつつ、金星周回軌道へ入る準備を進め、今年12月初めに金星に到着する予定である。

また、いっしょに打ち上げられた、小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」では、太陽電池の発電と実証機の姿勢などが正常であることが確認され、通信も無事に確立された。今後は数週間かけてソーラーセイルの展開、薄膜太陽電池による太陽光発電の確認が行われる。

<参照>

<関連リンク>

<関連ニュース>