太陽観測衛星「ひので」、白色光フレアの謎を解明

【2010年5月21日 JAXA

日本の太陽観測衛星「ひので」とNASARHESSI衛星が同時に最大規模の太陽フレアを観測した結果、発見から150年あまり謎のままであった「白色光フレア」という現象の発生起源がついに解明された。


(「ひので」がとらえたフレア発生前(左)と発生中(右)の太陽面

「ひので」がとらえたフレア発生前(左)と発生中(右)の太陽面。クリックで拡大(提供:JAXA/NAOJ、以下同)

(増光の光度分布)

(左)「ひので」がとらえた白色光フレア、(右)増光の光度分布(赤い等高線:RHESSI衛星の観測による硬X線の分布)。クリックで拡大

太陽は、しばしば「太陽フレア」という太陽系最大の爆発現象を起こす。太陽フレアはおもに、太陽の表面付近のコロナから出るX線や彩層から出るスペクトル線(水素のHα線やカルシウムのH線など)を通じて観測される。とくに強い場合には、人間の目で見える光でも爆発に伴う増光が観測されることがあり、「白色光フレア(可視連続光)」と呼ばれている。

もともと太陽フレアは、1859年にイギリスの天文学者キャリントンが黒点のスケッチ中に白色光の増光として偶然に発見された現象だ。その後、20世紀に入って本格的な太陽フレアの観測が始まったが、「白色光」に関しては、従来の地上からの観測では測光精度があまり高くなく、観測例もごく少数にとどまっていた。そのため、その発生メカニズムは長年にわたり謎であった。

しかし、2006年に打ち上げられた「ひので」に搭載された可視光磁場望遠鏡によって、活動領域の光度分布や時間変化に関する精密なデータが得られるようになり、白色光発光が多くのフレアに見られる普遍的な現象であることが明らかになってきている。

「ひので」の可視光磁場望遠鏡は、2006年12月14日の22時09分(世界時)に最大規模の太陽フレアが発生した際に白色光を観測した。それと同時刻にNASARHESSI衛星も同じフレアの硬X線(高エネルギーのX線)を観測した。

その観測データの解析により、RHESSI衛星がとらえた硬X線、つまりフレアによって高速に加速された電子の存在場所や時間変動などが、「ひので」がとらえた白色光と極めてよく一致していたことが明らかになった。

また、40キロ電子ボルト(※)(光の速度の約40%)以上に加速された電子すべてが持つエネルギーが、白色光の発光に必要なエネルギーに匹敵するものであることもわかり、太陽フレアによって高速に加速された電子が白色光の起源であることが示された。

太陽フレアによって加速された高エネルギー粒子が大量に地球まで到達すると、地球磁場のかく乱や地上における宇宙線量の増加などを引き起こし、私たちの生活にまで影響を及ぼすことがある。しかし、太陽フレアによって粒子がどのように加速されているのはほとんどわかっていない。そのため、太陽大気中における加速粒子のエネルギー輸送のモデル化が重量な課題となっている。

「ひので」とRHESSI衛星によって、白色光発光の際に加速された電子が果たす役割が明らかになったことから、今後そのモデル化が可能になるだろうと期待されている。

(※電子ボルト:電子を1ボルトの電圧で加速したときに得られるエネルギー)