ボイジャー2号のデータ送信システムに異常

【2010年5月7日 JPL

NASAは、先月22日に探査機ボイジャー2号で観測データの送信に異常が発生したことを発表した。ボイジャー2号は現在、探査機の状態のみを発信するモードに切り替えられており、原因の究明を含めた復旧作業が進められている。


(太陽系を包む「ヘリオスフィア」の果てを航行中のボイジャー2号の想像図)

太陽系を包む「ヘリオスフィア」の果てを航行中のボイジャー2号の想像図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

4月22日に探査機ボイジャー2号から送られてきた観測データに異常が発見された。これを受けて4月30日に、原因究明を目的として探査機の状態のみを発信するモードに切り替える命令が送信された。

その後、5月1日に探査機から届いた初期データによると、探査機の動作は基本的に正常なものの、観測データをフォーマットするためのシステムに異常があり、地球に届くデータは読み取りが不可能な状態だという。

ボイジャー1号と2号は、史上もっとも遠い太陽系の果てに到達した人工物である。現在、ボイジャー1号が地球から169億km、ボイジャー2号が約138億kmの距離にあり、1977年の打ち上げから33年を経た今も通信を続けている。この距離(海王星までの距離の約3倍)にあると、地球からボイジャー2号に命令が届くまでには13時間かかり、またその返信が戻ってくるのにも13時間を要する。

なお、ボイジャー1号と2号のミッションは、当初木星と土星の探査を目的に4年間の探査期間が設定されていた。その後ミッションが延長され、ボイジャー2号は1986年と1989年にそれぞれ天王星と海王星に接近通過した。その観測で、海王星に大黒斑や秒速450mの風の存在を明らかにした。また、海王星の衛星トリトンには、窒素の氷でできた極冠に火山のような噴出を発見した。そのほか、ボイジャー1号とともに、土星の環が衛星によって波立っているようすや、木星の衛星イオの表面で活発に活動する火山の発見にも貢献した。


ボイジャー1号、2号の位置と航路

天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ Ver.8」では、ボイジャー1号、2号の現在位置と航路を表示することができます。