天文衛星「プランク」の最新画像が公開に!

【2010年4月30日 ESANASA JPL

ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の宇宙背景放射観測衛星「プランク」が、天の川銀河内にある2つの星形成領域をとらえ、可視光の望遠鏡では真っ暗にしか見えない空間に無数の構造を明らかにした。


(プランクによるオリオン座の星形成領域の画像)

プランクによるオリオン座の星形成領域の画像。クリックで拡大(提供:ESA/LFI & HFI Consortia)

(プランクによるペルセウス座の星形成領域の画像)

プランクによるペルセウス座の星形成領域の画像。クリックで拡大(提供:ESA/LFI & HFI Consortia)

宇宙背景放射観測衛星「プランク」は、赤外線やマイクロ波などの可視光より長い波長で、全天サーベイを進めている。その目的は、ビッグバンのなごりである宇宙背景放射をとらえて、宇宙の誕生やこれまでの歴史、今後宇宙がたどる運命などに迫る手がかりを得ることである。また、天の川銀河内に満ちている磁場や、冷たいちりを観測し、詳細な広域3次元マップを作成する。

その過程で、プランクがとらえた2つの星形成領域の画像が公開された。プランクはガスやちりなどの冷たい物質からの放射をとらえ、可視光の望遠鏡では真っ暗にしか見えない空間に、無数の構造を明らかにした。また、広範囲にわたってさまざまな相互作用が起きていることを明らかにした。

右1枚目の画像は、オリオン大星雲で有名な「オリオン領域」をとらえたものである。オリオン座にあるこの領域は、地球から約1500光年の距離にあり、太陽系からもっとも近い星生成領域のひとつである。画像は、視野角が縦横ともに13度で、満月が縦横それぞれに26個も並ぶほどの広範囲がとらえられている(縦横比が同じ拡大画像を見るには、右画像をクリックのこと)。

画像の下方中央には、オリオン座大星雲が明るい点として見えている。また、中央右側にある明るい点は、馬頭星雲の周辺領域である。馬頭星雲という名前は、拡大した画像中で、ちりの柱が馬の頭の形に見えることに由来している。

また、画像に見られる赤く巨大な弧は「バーナードループ」と呼ばれており、約2百万年前に起きた超新星爆発の衝撃波でつくられたと考えられている。この泡のような構造の大きさは、差し渡し300光年ほどと計算されている。

右2枚目の画像は、ペルセウス座の方向にある領域をとらえたもの。オリオン領域とは対象的に、星形成はそれほど活発ではないが、プランクは、この領域で多くのことが進行しているようすと見せてくれた。

プランクが持つ9つの周波数チャネルのうち、もっとも長い1cm前後の波長では、銀河の磁場に高速の電子が作用して起きる放射マップが作成される。また、数mmといった中間の波長では、高温の生まれたばかりの星によって暖められたガスの放射をとらえることができる。

さらに短い1mm以下の波長では、ひじょうにつめたいちりが放つわずかな熱をとらえて、その分布を明らかにする。この観測では、ちりやガスの雲の中にある、冷たい塊状の構造を明らかにできる。星はこの塊が母体となって生まれる。この塊が自己重力で崩壊すると中心に原始星が形成される。やがてその星によって周囲を取り巻くちりの雲はばらばらに分散される。銀河で誕生する星の数は、このようなちりの雲の崩壊とちりの分散というバランスで調節されている。