100億光年かなたに、星の大量生産工場

【2010年3月29日 CfA

地球から100億光年離れた銀河の観測で、天の川銀河の250倍もの速度で星形成が進んでいることが示された。また、同銀河内に観測された4つの星形成領域の1つ1つが、天の川銀河の周辺に見られる銀河の100倍も明るいことがわかった。


(SMM J2135-0102に似たスターバースト銀河「Arp 220」の画像)

SMM J2135-0102に似たスターバースト銀河の例「Arp 220」。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, the Hubble Heritage-ESA/Hubble Collaboration, and A. Evans (UVa/NRAO/Stony Brook))

(サブミリ波で見た4つの星形成領域の画像)

サブミリ波で見た4つの星形成領域。左上は重力レンズ効果がない場合の見え方。クリックで拡大(提供:Mark Swinbank(Durham)and Steve Longmore(SAO)、拡大図中の右下は、サブミリ波干渉計の分解能を示している)

地球から約100億光年の距離にある銀河「SMM J2135-0102」は、地球からの観測では、銀河団の背後に位置している。その銀河団の重力がレンズの役割を果たし、はるかかなたにある銀河の大きさや明るさを16倍拡大している。

しかしこの銀河は、たくさんのちりに覆われていて可視光で見ることはできない。一方、電波の一種であるサブミリ波で見ると並外れた光を放射していて、これまでに知られている中ではサブミリ波でもっとも明るい銀河として観測される。

英・ダーラム大学のMark Swinbank氏らの研究チームは、重力レンズ効果と米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのサブミリ波干渉計(Submillimeter Array)を合わせて、SMM J2135-0102を観測した。

観測で得られたデータから、銀河内にひじょうに明るい4つの星形成領域が発見された。その明るさは、われわれの天の川銀河周辺に見られる銀河の100倍も明るく、劇的なペースで星形成が進んでいることが示された。

なお、SMM J2135-0102は可視光で観測できないため、銀河までの距離は、アメリカ科学基金(NSF)のグリーンバンク電波望遠鏡(GBT)に搭載されている機器を使って、一酸化炭素分子からの電波放射の計測で明らかにされた。

さらに、得られた銀河までの距離をもとに、銀河が受けている重力レンズ効果が見積もられ、レンズの効果がない場合に銀河がどのように見えるかが求められた。

SMM J2135-0102は、ビッグバンから約30億年後に相当する宇宙に存在し、その大きさは天の川銀河と同じくらいだ。もし、この銀河を100億年後に見ることができれば、天の川銀河をはるかにしのぐ大きさの巨大楕円銀河に成長していることだろう。

Swinbank氏は、「この銀河の年齢は人間で言えば10代にあたり、まさに成長真っ盛りです」「なぜ星の形成がこのように急速に進んでいるのか、理由ははっきりしていませんが、われわれの観測結果は、初期宇宙ではひじょうに効率的に星形成が行われていたことを示唆しています」と話している。