大赤斑の赤い色と温度には関連があった

【2010年3月18日 JPL

木星の大赤斑の熱画像(サーモグラフィ)が公開された。これまでにない解像度を持つ画像から、暖かい渦の中心部分が、可視光でもっとも赤く見える領域に対応していることが明らかとなった。


(大赤斑の熱画像)

(ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた可視光で見た大赤斑の画像)

(上)大赤斑の熱画像(サーモグラフィ)、(下)ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた可視光で見た大赤斑。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/ESO and NASA/ESA/GSFC )

ヨーロッパ南天天文台(ESO)の大型望遠鏡VLT、ジェミニ南望遠鏡、国立天文台のすばる望遠鏡が木星の大赤斑を観測し、これまでにない解像度を持つ大赤斑の熱画像(サーモグラフィ)が得られた。

その結果、暖かい渦の中心部分が、可視光でもっとも赤く見える領域に対応していることが明らかとなった。画像には、赤斑の縁に見られる暗い筋もとらえられているが、これはガスが惑星内部の奥深くに向かって下降していることを示している。

NASAのジェット推進研究所の研究者Glen Orton氏は、「これは、太陽系最大の嵐の内部を詳細にとらえた、初めての画像です。かつて大赤斑は、構造と呼べるような大した特徴を持たない、平べったい楕円形だと思われたこともありました。しかし、最新の観測で、実はひじょうに複雑な構造を持っていることがわかりました」と話している。

大赤斑は、平均温度が摂氏マイナス163度の冷たい領域である。研究者をもっとも驚かせたのは渦の中心部分だ。周囲より3〜4度ほど暖かいのである。この程度なら大した違いはないだろうと思われがちだが、実はそうではない。通常、渦は反時計回りに回転している。しかし、これだけの温度差があれば、渦の中心部分の風向きを弱い時計回りに変えるにはじゅうぶんなのである。その影響は、風速や雲の形にも及ぶ。

英・オックスフォード大学の研究員Leigh Fletcher氏は、「これでわたしたちは、温度、風速、圧力、組成といった環境的な条件と大赤斑の色に密接な関係があるとはっきり言えるようになりました。どんな物質やどんなプロセスによって、この赤い色がつくられるのか、まだはっきりわかっていませんが、渦の中心で起きている環境的な条件の変化と関係していることがわかりました」と話している。