板垣さん発見の超新星らしき天体は、変光星だった

【2010年2月8日 VSOLJニュース(234)】

新天体捜索者の板垣公一さんが、2月5日(世界時)にりょうけん座の不規則銀河NGC 4214に超新星らしき天体を発見された。同天体はその後の分光観測で、明るく青い変光星(LBV)の爆発的増光であることが判明した。


VSOLJニュースより

(著者:山岡均さん(九大理))

((左から)2010年1月のNGC 4214の画像、新天体の発見画像、およびその反転画像)

(左から)2010年1月のNGC 4214の画像、新天体の発見画像、およびその反転画像。クリックで拡大(提供:板垣公一氏)

(門田健一氏撮影(2月5日)の画像)

門田健一氏撮影(2月5日、16.3等)の画像。クリックで拡大(提供:門田健一氏)

(遊佐徹氏撮影(2月6日、16.6等)の画像)

遊佐徹氏撮影(2月6日、16.6等)の画像。クリックで拡大(提供:遊佐徹氏)

距離3Mpc(1000万光年)ほどのたいへん近傍の銀河に、超新星らしい天体が発見されました。発見したのは山形市にお住まいの板垣公一(いたがきこういち)さん、大活躍を続けるベテラン天体捜索家です。

板垣さんは、栃木県高根沢町に設置した30cm反射望遠鏡を用いて2月5.634日(世界時、以下同様)に撮影した画像に、16.0等の新しい光点を見いだしました。その位置は以下のとおりで、りょうけん座の不規則銀河NGC 4214の中心から20秒角東、27秒角北にあたります。天体は板垣さん自身によって翌6.568日に、また埼玉県上尾市の門田健一(かどたけんいち)さんによって5.710日および6.664日に確認されました。

  赤経  12時15分41.06秒
  赤緯 +36度20分02.9秒 (2000年分点)
  NGC 4214の周辺星図と、DSS画像に表示した変光星

この銀河は3Mpcほどというたいへん近距離にあります。現在の新天体の絶対等級はマイナス12等ほどで、これは超新星としてはたいへん暗いものです。例外的に暗い超新星なのかそれとも星間吸収を受けているため暗いのか、または大質量星の表面爆発などの、星全体の爆発である超新星とは違う種類の天体なのか、天体の素性の解明には今後の分光確認や光度変化の追跡が不可欠です。

《山岡氏による続報 2月8日付》

分光観測が行われた結果、この天体は超新星ではなく、明るく青い変光星(LBV)の爆発的増光であることが判明しました(CBET 2163)。大質量星の進化の最終段階に近い天体です。

通常このような天体に、超新星の符号はつけないようになっています。今後、「2010U」の符号がどう扱われるかは未定ですが、次の番号がすでに使われていることもあり、欠番となる可能性が高いものと思われます。


NGC 4214の変光星の位置

この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後、「データ更新」を行ってください。

<参照>

  • VSOLJニュース(234): たいへん近傍の銀河に出現した超新星らしき天体
  • CBET 2161: SUPERNOVA 2010U IN NGC 4214 (2010 Feb. 6)
  • CBET 2163: SUPERNOVA 2010U IN NGC 4214 (2010 Feb. 7)

<関連リンク>

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