大質量星を取り巻く円盤の直接撮像に成功

【2009年11月19日 すばる望遠鏡

すばる望遠鏡が、太陽の10倍程度の質量を持つ星の周囲を赤外線で撮像し、大質量星を取り巻く円盤の像を直接とらえることに成功した。


(すばる望遠鏡がとらえたHD200775 の画像)

すばる望遠鏡が中間赤外線観測装置(COMICS)を使ってとらえたHD 200775の画像(右下の黄色い部分が円盤)。クリックで拡大(提供:国立天文台)

太陽程度の質量の星が生まれるとき、星のもとになるガスが収縮して円盤を形成し、その円盤を通して物質が中心の星に降り積もっていくことがわかっている。実際に、そうした星を取り巻く円盤が赤外線や可視光によって直接的に観測されている。

一方、太陽の8倍以上という大きな質量を持つ星も円盤の中で誕生するかどうかは、円盤が直接とらえられた例がなく、いまだによくわかっていない。

その理由としては、大質量星の進化がとても速く円盤が極めて短い時間で消失してしまうこと、形成期の大質量星は分子雲に深く埋もれていてその姿を外から見通すことがとても難しいこと、などが挙げられる。また、そもそも大質量星はもっと軽い星に比べて数がずっと少ないため、なかなか調べにくいという面もある。

茨城大学と宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの研究者からなるチームは、すばる望遠鏡の中間赤外線撮像分光装置(COMICS)を使い、質量が太陽の10倍ほどの大質量星を取り巻く円盤を直接とらえることに成功した。

同チームが観測したのは、ケフェウス座の方向約1400光年の距離にある若い星HD 200775。HD 200775は少なくとも2つの星が半径6.5天文単位(1天文単位は地球と太陽の平均距離で約1億5000万km)の軌道で互いのまわりを回っている連星系だが、今回の観測では、その軌道とほぼ同じ方向に伸びる、半径750AU(天文単位)から1000AUの楕円形の放射が検出された。これは連星の軌道面とほぼ同じ方向に広がった円盤を、円盤面に近いところから見ていると考えられている。

さらに、中心星の位置と円盤の中心がわずかにずれていることも明らかとなり、円盤が平坦ではなく、外にいくほどめくれあがった形の「フレア円盤」であることが示された。フレア円盤は、太陽ほどの星のまわりでは観測例があったが、大質量星でも同様の形状を示すことがわかった。

また、赤外線で光っている円盤領域を過去の電波観測の結果と比較した結果、「光蒸発」と呼ばれるガスの散逸現象が起きている可能性が示された。HD 200775は、強い紫外線を放つことで自ら周囲の円盤を消失させているようだ。

今回の観測を含め、円盤による星形成の証拠は、質量が太陽の10倍から20倍程度の星でしか明らかになっていない。もっと重い星がどのように形成されるのかは、今後の観測にゆだねられている。