ハッブル宇宙望遠鏡の新カメラがとらえたM83

【2009年11月12日 HubbleSite

今年5月にハッブル宇宙望遠鏡(HST)へ取り付けられた広視野カメラ3(WFC3)がとらえた渦巻銀河M83の画像が公開された。


銀河M83の全体像とHSTによるクローズアップ

(左)M83の全体像(ヨーロッパ南天天文台2.2m望遠鏡)、(右)HSTがとらえた中心部。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, R. O'Connell (University of Virginia), the WFC3 Science Oversight Committee, and ESO)

HSTには、今年5月に実施された修理ミッションで、新しいカメラ「WFC3」が取り付けられた。WFC3は、紫外線から近赤外線におよぶ広範囲の波長に対応しており、さまざまな進化の段階にある星をとらえることができ、星形成の歴史を理解するのに役立つ情報を提供してくれる。

そのWFC3がとらえたM83の中心部の画像が公開された。M83は、うみへび座の方向約1500万光年の距離にある棒渦巻銀河だ。急速な星形成が進んでいて、その華やかな姿から「南の回転花火銀河」と呼ばれる。

画像には、若い星の集団や古い球状星団、さらには個々の恒星(おもに青色超巨星や赤色超巨星)が写っている。

暗いちりの帯の端々では、この銀河でもっとも若い世代の星が星団をつくっている。これら生まれたばかりの星は、自らを包みこんでいたちりの中から姿を現し、(画像中赤く輝いて見える)ガスの泡をつくっている。また、年齢が数百万歳の若い星からの放射によって周囲のガスが吹き飛ばされて、青く明るい星団も姿を見せている。

さらに、銀河の中心を貫くように、ガスやちりなどからなる棒状の構造も見えている。この構造によって銀河の中心に物質が集められ、活発な星形成が引き起こされていると考えられている。

なお、この画像には、これまでに知られていた数の5倍を上回る60個もの超新星残骸がとらえられている。これらの天体を研究すると、この銀河の重元素を作り、それを銀河中にばらまいた星の先祖の特性に関する情報がもたされる。