最遠の超巨大ブラックホールを抱える銀河

【2009年9月4日 University of Hawaii

すばる望遠鏡による観測で、観測史上最遠(地球から128億光年)の超巨大ブラックホールのまわりに、このブラックホールを中心に持つ銀河の構造がとらえられた。初期宇宙におけるブラックホールと銀河の関係、およびその進化を考える上で、貴重なサンプルになりそうだ。


(CFHQSJ 2329-0301の画像)

CFHQSJ 2329-0301のカラー合成画像。クリックで拡大(提供:ハワイ大学 後藤友嗣氏)

(CFHQSJ 2329-0301の画像)

元の画像(左)から、ブラックホールの光を計算したモデル(中)を差し引いて得られた銀河の像(右)。クリックで拡大(提供:ハワイ大学 後藤友嗣氏)

宇宙の最遠方では、銀河よりも、銀河の中心に潜む超巨大ブラックホールの方が見つけやすい。ブラックホール自身は光を出さないが、ブラックホールに吸い込まれる物質は衝突と摩擦を繰り返して高温で輝く。ブラックホールの質量が太陽の約1億倍にもなれば、銀河で輝くブラックホール以外の星すべての合計よりも明るくなるのだ。

遠い宇宙を見ることは、それだけ昔の宇宙を見ることに相当する。宇宙の歴史はおよそ137億年と考えられているが、超巨大ブラックホールは120億年以上前にはごくありふれていたらしい。これまでに見つかっている最遠の超巨大ブラックホール「CFHQSJ 2329-0301」は128億年前のもので、太陽の10億倍以上の質量を持つ。問題になるのは、どうやって短期間のうちにこれだけの質量を集めたのかという点だ。

超巨大ブラックホールの進化を考える上で、そのブラックホールを中心に抱える銀河との関係が鍵を握るはずだ。しかし、前述のとおり銀河をとらえるのは難しく、観測例は少ない。

ハワイ大学の後藤友嗣研究員らはこの困難を克服し、最遠の超巨大ブラックホールCFHQSJ 2329-0301を囲む銀河の構造を描き出すことに成功した。後藤氏らはCFHQSJ 2329-0301をすばる望遠鏡の主焦点カメラで撮影したあと、超巨大ブラックホール単独の光を推計して差し引くことで、周辺の銀河からの光をとらえたのである。

CFHQSJ 2329-0301を囲む銀河の直径は、およそ72,000光年。われわれの天の川銀河(10万光年)に匹敵する規模だ。後藤氏は当時の宇宙年齢が現在のわずか16分の1だったことを指摘し、「巨大銀河とブラックホールは宇宙初期に急激に進化したに違いない」と述べている。

また、研究チームの一員で総合学術研究大学院大学の内海洋輔氏は「われわれは超巨大ブラックホールとホスト銀河が一緒に形成している現場をまさに目撃した。この研究を皮切りに宇宙初期における超巨大ブラックホールとホスト銀河の進化がより詳細に解き明かされるだろう」と話した。