星が星を生む証拠写真、スピッツァーが撮影

【2008年8月25日 Spitzer Newsroom

打ち上げ5周年を記念して、NASAの赤外線天文衛星スピッツァーが撮影した星形成領域W5の写真が公開された。大質量星が新たな恒星を誕生させている決定的な証拠も含まれている。


(スピッツァーが撮影した星形成領域W5の写真)

スピッツァーが撮影した星形成領域W5。3種類の赤外線で撮影した疑似カラー画像。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/L. Allen & X. Koenig (Harvard-Smithsonian CfA))

スピッツァーが赤外線でとらえた星形成領域W5の画像は、複雑に渦巻く星間物質を背景にした、恒星の家族写真でもある。質量の大きな恒星から猛烈な勢いで吹き出すガスや光が周囲で新たな恒星を誕生させていることが、画像データを分析することで明らかになった。

太陽の15倍から60倍もの質量がある巨大な恒星は、外層の物質を恒星風として宇宙空間に飛ばすとともに、強烈な光を放つ。そのため、周囲の星間物質は吹き飛ばされて、空洞ができる。これまで天文学者は、空洞の境界付近では物質が圧縮されて、新たな世代の恒星が誕生すると考えていた。

しかし、米国ハーバード・スミソニアン天体物理センターのXavier Koenig氏によれば、別の現象に刺激されて新たな恒星が誕生することを実証するのは困難であるという。大質量星を中心とした空洞があって、その周囲で若い星が輝いていたとしても、その配置が偶然であることは完全に否定できないからだ。

そこで、Koenig氏らは星形成領域W5に写っている恒星の年齢を調べた。すると、空洞の内側で輝く恒星よりも、端の方で輝く恒星の方が若いことが判明した。空洞の外側で輝く恒星は、さらに若かった。これは、大質量星が新たな恒星を誕生させている証拠としてはもっとも有力なものである。

W5はカシオペヤ座の方向6500光年の距離にあり、見かけ上は満月4個分の大きさがある。スピッツァーは24時間以上にわたって、複数の波長の赤外線でW5を撮影した。もっとも古く、質量の大きな恒星は、空洞中の青い点として写っている。新たに誕生した恒星のほか、手前や奥にある無関係の恒星も青く写っている。さらに、空洞の周縁部で削られた柱状の構造の先端には、若い恒星がピンク色で写っている。また、空洞を満たす熱いガスが赤、濃い星間物質が緑、今まさに恒星が誕生している領域が白で、それぞれとらえられている。

ところで、W5でほかの恒星の「親」となった大質量星は、数百万年もすると大爆発を起こして生涯を終える。そのときには、自らが生み出したかもしれない周囲の若い恒星も巻き込んで、破壊してしまうのだという。