成功するか、火星の土壌分析 氷を検出するまでの長い道のり

【2008年7月29日 JPL

火星の北極地方で探査を続けるNASAの火星探査機「フェニックス」は、少なくとも見た目には土壌に氷が含まれていることを教えてくれた。あとはサンプルを回収して成分を分析するだけなのだが、予想以上に障害が多く難航している。


(フェニックスのロボットアームの画像)

土壌を運ぶフェニックスのロボットアーム。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M University)

(火星の白夜の画像)

フェニックスは火星の北極地方にあり、季節は夏。この連続写真のとおり、白夜だ。蒸発によるロスを抑えるため、土壌を掘る作業は徹夜で行われる見込み。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/Texas A&M University)

フェニックスは5月末に火星への着陸に成功して、火星表面のようすを地球へ伝え続けている。送られてきた画像からは、火星の赤茶けた表土を掘ると白っぽい物質が現れること、そして掘り起こされた物質が外気にさらされているとやがて蒸発してしまうことなどがわかった。これは、火星の地下に氷が眠っていることの有力な証拠と言える。

氷の存在をより決定的に証明するために、フェニックスには土壌サンプルを回収して小型オーブンで蒸発させ、成分を分析するTEGAと呼ばれる装置が搭載されている。すでに6月上旬からTEGAを使った測定が始まっていたのだが、思わぬ障害が次々と発生して、いまだ成功に至ってない。

TEGAには全部で8つの小型オーブンがあり、すべて1度しか使えない。また、オーブンにサンプルを入れるためには、土壌をロボット・アームですくって、装置のふたを開けた上で「ふるい」を通さなければならない。

6月6日には最初のサンプル回収が実施されたが、土壌の粘り気が予想以上に強く、ふるいを詰まらせてしまった。装置全体を振動させることで、数日後にようやくオーブンを稼働させることができたのだが、氷の成分は検出できなかった。時間をかけている間に蒸発してしまったという見方もある。悪いことに、装置を振動させたことで電気回路に不具合が生じ、2個目のオーブンを作動させるとTEGA全体が故障してしまう可能性がでてきた。

次の測定が最後になるかもしれないとあって、サンプルの回収にはできるだけ氷が多く含まれていそうな場所が選ばれ、作業は極めて慎重に行われた。ところが、時間をかけすぎるとその間に氷が蒸発してしまう。また、オーブンのふたどうしが干渉してうまく開かない問題も発生。無事に開いたところへ土壌を入れようとしたら、今度は土壌がアームの先端にくっついたまま落ちなかった。

フェニックスの運用チームによれば、TEGAの電気回路の調子は予想以上に良好で、複数回の使用に耐えられるかもしれないという。また、サンプルをオーブンに入れる際も、ただ落とすのではなく、塩をつまんで鍋に入れるときのようにこすりながら入れるなど、さまざまな工夫を考案している。あとは、チームの努力が氷とともに蒸発してしまわないことを願うだけだ。