宇宙基本法案が衆議院を通過

【2008年5月14日 アストロアーツ】

日本の宇宙政策の基本を変える宇宙基本法案が衆議院を通過した。国政のテーマは足元の道路を作る話に大きな注目が集まっている昨今だが、私たちの頭上の宇宙空間をどのように利用していくべきか、といった議論の動向にも注目したい。


日本の宇宙開発は、宇宙科学などの「非軍事」に限るという原則がなくなる見通しだ。5月13日、軍事目的の宇宙利用を解禁する宇宙基本法案が、自民党、民主党、公明党の賛成多数で衆議院本会議で可決され、法案は参議院に送られた。

法案には民主党の提案で「憲法の平和主義の理念をふまえ」との文言が加えられたものの、成立すれば宇宙開発・利用が防衛目的でも認められることになる。たとえば、自衛隊が人工衛星を保有したり、日米安保の一環としてアメリカのミサイル防衛に宇宙政策の面から日本が協力したりといった可能性も出てくる。

国会では1969年に宇宙開発・利用について「…平和の目的に限り、学術の進歩、国民生活の向上及び人類社会の福祉を図り、あわせて産業技術の発展に寄与すると共に、進んで国際協力に資するためにこれを行うものとする」と、非軍事の原則を決議している。宇宙基本法がこうした原則と整合するかどうか、また、日本が宇宙を軍事目的で利用すべきかどうかについては、国民的な議論が必要だろう。

こうした動向に危機感を募らせているのは、反対する政治勢力だけではない。科学者の社会的責任として宇宙基本法案に反対を表明する天文学者なども相次いでいる。この問題については、月刊星ナビ 2007年7月号で取り上げているほか、現在では反対署名を集めるウェブページなども立ち上がっている。

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