すばる望遠鏡、地球型惑星が生まれているかもしれない現場を撮像

【2008年2月14日 すばる望遠鏡

すばる望遠鏡が、太陽の10分の1の質量を持つ軽い恒星の周りに広がる原始惑星系円盤の姿をとらえた。小さな惑星が誕生する現場が画像として直接的にとらえられたことは、地球型惑星の誕生過程を探る上で重要な手がかりとなる。


(FN Tauの原始惑星系円盤)

CIAOで観測されたFN Tauの原始惑星系円盤。中心星は円いマスクで隠されている。円盤の一部が黒く見えているのは望遠鏡の副鏡支持機構の影響。クリックで拡大(提供:すばる望遠鏡、国立天文台)

惑星はどのように形成されるのか。その疑問に答えることは天文学における重要な課題であるが、惑星形成の現場である原始惑星系円盤を画像としてとらえることは、現在の観測技術をもってしても簡単なことではない。ガスと塵でできた暗い円盤の中心では、中心星(恒星)が桁違いの強烈な光を放っており、さらには地球−恒星間の距離に比べて円盤の広がりはあまりにも小さいのだ。恒星の光を何らかの方法で遮り、かつ高い解像度で観測しないと、円盤の実態はなかなか見えてこない。

総合研究大学院大学、国立天文台、宇宙航空研究開発機構、名古屋大学、神戸大学、茨城大学の研究者からなるチームは、すばる望遠鏡のコロナグラフ撮像装置CIAO(チャオ)および補償光学装置を用いて、軽い恒星の周りの原始惑星系円盤の直接撮像に成功した。CIAOは円いマスクで明るい中心星を覆い隠し、赤外線で暗い天体を検出するというユニークな観測装置で、地球の大気の揺らぎの影響をキャンセルする補償光学装置と組み合わせることで高い性能を発揮する。星を隠して周りを調べることに特化した観測装置を用いたからこそ、星の周囲に広がる淡い構造をとらえることができたのだ。

狙った恒星はFN Tau(おうし座FN)で、質量は太陽の10分の1という軽い恒星だ。地球から約460光年の距離のおうし座星形成領域にある星のひとつで、年齢約10万年とひじょうに若い恒星である。FN Tauは、これまでに原始惑星系円盤が撮像されたもっとも軽いTW Hya(うみへび座TW)と比べて、7分の1の質量しかない。太陽質量の半分以下の恒星の周りの原始惑星系円盤を画像としてとらえた世界初の例ということになる。

画像には円形の像が写った。これは円盤をほぼ真上から見た姿であると解釈される。これまでに見つかっている他の原始惑星系円盤と比較すると、サイズは標準的といえるが質量は小さいと推定される。惑星形成の理論からは、この質量の円盤の中では中心星から30天文単位以内には地球質量以下の小さな惑星しか形成されないことが示されるという。

現在、地球サイズの系外惑星はまだ発見されていないが、小さな惑星が誕生する現場がこのように画像として直接的にとらえられたことは、地球型惑星の誕生過程を探る上で重要な手がかりとなる。惑星系のルーツを探るこうした研究は、いずれ私たちの太陽系の理解にもつながるものだ。