大きくふくれあがった系外惑星の謎

【2007年8月27日 W. M. Keck Observatory

半径が木星の1.67倍と、サイズが測定できる系外惑星の中では最大のものが見つかった。一方、半径と質量から求められる密度は史上最小で、水の4分の1から5分の1ほどしかない。惑星は、どこまでふくれあがることができるのだろうか。


(TrES-4の想像図)

TrES-4の想像図。クリックで拡大(提供:Jeffrey Hall, Lowell Observatory)

系外惑星の観測史上、最大半径と最小密度の記録を同時に塗り替えたのは、ヘルクレス座の方向1,400光年の距離にある「TrES-4」。「トランジット法」による20例目の発見である。

トランジット法とは、惑星が恒星の前を横切るときに恒星の光がわずかに暗くなるのを利用した検出方法だ。TrES-4の場合、恒星の明るさが周期的に1パーセント減光するのが観測された。トランジット法の利点は、小さな望遠鏡でも観測できることだ。TrES-4を発見したのは、口径10センチメートルの望遠鏡ネットワーク「TrES」である。

もう1つの利点は、恒星が暗くなる割合から惑星のサイズを見積もれることだ。米国ハワイのケック天文台10メートル望遠鏡などが動員され、TrES-4の追観測を行った。さらに、惑星の重力で中心の恒星がわずかにぶれるようすも観測され、質量が求められた。

これまでに見つかった系外惑星はおよそ240個で、そのうち20個あまりがトランジット法で観測されていた。その中には質量に対して半径が異常に大きな惑星、「HD 209458b」と「HAT-P-1」があった。2006年9月に発見が報告されたHAT-P-1の半径は木星の1.38倍で、比重は約0.27(木星の比重は1.3)。観測史上最大で、もっとも密度の小さな惑星だった。

それに対し、TrES-4の半径は木星の1.67倍で、質量は木星の0.84倍。比重はおよそ0.22とひじょうに小さい。「惑星が(その質量に対して)ここまで大きくふくれあがることができるとは、ただただ驚くばかりです。でも、こうした惑星の膨張を説明できれば、私たちの太陽系の惑星やその生い立ちについて理解を深めることができるかもしれません」とTrES-4を研究するチームの1人で米国カリフォルニア工科大学の大学院生であるFrancis O'Donovan氏は語る。

また、研究チームを率いた米国ローウェル天文台のGeorgi Mandushev氏はTrES-4が見つかったことの意味を、「今回の発見で、巨大惑星の構造や大気の研究に新たな謎が提供されました。系外惑星の物理的性質が実に多様であることを教えてくれるとともに、今後さらに不思議な惑星が見つかることも予感させてくれます」と説明した。

TrES-4は3.55日の周期で、主星から約700万キロメートル離れた軌道を回る。この距離は水星−太陽間の10分の1以下だ。表面温度は絶対温度1600度に熱せられている。性質がTrES-4に比較的近い惑星HD 209458bでは、大気が外層から逃げ出し、彗星のような尾を形成していることがわかっている。TrES-4の姿も、それに近いかもしれない。

ステラナビゲータ Ver.8で系外惑星の位置を表示

ステラナビゲータ Ver.8では、TrES-4の位置を星図に表示させることができます。惑星の存在が確認された恒星約250個(ニュース公開時点)を追加天体として「コンテンツ・ライブラリ」で公開しています。ステラナビゲータ Ver.8をご利用の方は、ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードしてください。