恒星の二重円盤構造の劇的変化を世界初観測

【2007年8月21日 西はりま天文台

兵庫県立西はりま天文台の「なゆた望遠鏡」は2005年に恒星プレオネをとりまく二重円盤を発見したが、その後も続けて観測を行い、2つの円盤がわずか1年で劇的に変化していくようすをとらえた。外側の円盤が崩壊していく一方で、生まれたばかりの内側の円盤は急成長している。新旧の円盤が交代しようとしているらしい。


西はりま天文台 プレスリリースより

(2005年12月のプレオネ)

図1:2005年12月のプレオネ

(2005年12月のプレオネ)

図2:2007年2月のプレオネ(図1, 2ともに提供:坂元 誠(西はりま天文台))

兵庫県立西はりま天文台の2メートル『なゆた望遠鏡』(国内に設置された望遠鏡としては最大、公開望遠鏡としては世界最大)が、すばる(M45・プレアデス散開星団)に属する恒星プレオネの周囲に存在する傾斜二重円盤をモニター観測してきた結果、1年ほどの間に内側の円盤の大きさが2倍となり、逆に外側の円盤は消滅寸前であることを見いだしました。恒星における二重円盤構造の劇的変化を世界で初めてとらえたことになります。詳細な論文は、8月25日発刊の日本天文学会欧文雑誌Publications of the Astronomical Society of Japan(PASJ)に掲載されます。

プレオネはすばる(プレアデス散開星団)の中で7番目に明るい5等星です。スペクトル型の分類ではB型に属し、表面温度は約1万2000度。地球からの距離は約420光年、年齢は1億歳程度、半径は太陽のおよそ4倍です。1972年にカナダのガリバーらがプレオネの周囲に高温ガス円盤が存在することを発見しました。2005年12月になゆた望遠鏡などによる分光観測から、その円盤のさらに内側に新たな円盤が形成されていることを発見しました。国立天文台堂平観測所(当時)と岡山天体物理観測所での偏光観測データの円盤歳差運動仮説による解析と合わせて考えると、外側の円盤(旧円盤)と内側の円盤(新円盤)は、約100度の角度で傾斜していると推察されます。恒星の周囲に二重のガス円盤を持つ星は、この他にも4例ほどが知られていますが、2つの円盤が傾斜しているものが発見されたケースはプレオネが世界初です。

我々はその後も、なゆた望遠鏡による分光(スペクトル)モニター観測を継続してきました。この間、水素の輝線スペクトルなどに劇的な変化が現れました。データの詳細な解析から、なゆた望遠鏡で最初に検出された新円盤はしだいに成長して大きくなり、一方で外側の旧円盤は内側から崩壊して急速に衰退していきました(現在はほぼ消滅していると考えられます)。1年ほどの短期間に、新旧の二重円盤が共存しながら交代するというたいへん珍しい現象を世界で初めて観測したことになります。

新円盤発見時の2005年12月におけるプレオネの想像図が図1です。また、2007年2月ごろの想像図が図2です。またそれぞれの時期での円盤の大きさを下の表に示します。単位は星の半径です。

内側(新)円盤 外側(旧)円盤
内径 外径 内径 外径
2005年12月 1(星の赤道部) 1.7 1.7 5.5
2007年 2月 1(星の赤道部) 3.2 3.2 4.3

(新円盤の外部と旧円盤の内部は接していると考えられます)

1972年に形成された旧円盤は、伴星による長期間の歳差により、赤道から大きく傾き、新円盤は形成まもないので赤道面にあると考えられます。我々は今後、国立天文台岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡も利用してモニター観測を継続し、形状の変化や相互作用などプレオネの謎に迫ろうと考えています。

プレオネ研究チーム
田中謙一・定金晃三(大阪教育大学)
鳴沢真也・内藤博之・坂元 誠(西はりま天文台)
神戸栄治(国立天文台岡山天体物理観測所)
片平順一(元堺市教育センター)
平田龍幸(元京都大学)