月面一時現象の謎、400年を経て解明か

【2007年7月20日 Columbia News

月面の色や明るさが変化する現象は、400年にもわたり数千人の研究者たちに肉眼で観測されてきた。そのメカニズムは解明されるどころか、現象そのものを目の錯覚とする考え方もあるが、ガスの噴出と関係があるという結果が発表された。


月面一時現象(TLP)をとらえた画像

月面一時現象(TLP)をとらえた画像(中央の明るい点がTLP。(白い矢印は、ニュース編集部による)。クリックで拡大(提供:Columbia's Department of Astronomy, Photo by Leon Stuart)

400年以上にわたり、月の表面が異常に明るくなったり暗くなったり、色が変化したりするようすが数多く観測され、写真にも収められてきた。1971年のアポロ15号や1998年のルナ・プロスペクターによっても月面探査の際に目撃されている。この現象は、「月面一時現象」(TLP)と呼ばれている。長年の観測にもかかわらず、現象を裏付ける明確な測光の記録などがないため、人の目による錯覚ではないかとさえいう意見もある。

典型的なTLPは、月面上で数キロメートルの範囲で起こり、継続時間は数分だ。コロンビア大学のArlin Crotts教授は、この現象と月面から噴出するガスが統計的に深い関わりをもっていることを明らかにした。噴出は、月に限らず衛星などの天体の表面から比較的浅いところにガスが溜まっていて、もれ出てくるために起こる。

Crotts教授は、「TLPについては長年にわたりいろいろと論議されてきました。たとえば、地球の大気によるものであるとか、観測者による心理学的な過剰な反応のためであるとか。しかし、この現象は、月面からもれるラドンガスと強い関係があるのです。決して、地上のできごととは関係はありません」と話している。教授は、ガスの噴出地点と月面探査で記録されたTLPの地点、さらに今まで報告のあったTLPの地点とがひじょうに似通っていることを発見したのだ。

Crotts教授はTLPのなぞ解きにあたり、2つの点が研究者を阻んでいたと話している。1つには、歴史的にガスの噴出が話題としてひんぱんに取り上げられる一方で、月では火山性の活動がすでに終わっていると考えられている点。そして何よりも、TLPに関する視覚的なデータが膨大である点だ。

Crotts教授は、自らの研究成果をもとに月面をモニターすれば、いつ、どこでガスが噴出するが明らかになると考え、チリにあるセロ・トロロ汎米天文台にTLP観測用のロボット・カメラを設置した。これで、人的ミスや機器の不具合による観測上の問題などを一切排除することができるのだ。今後カメラによってTLPが数秒間隔で記録されることで、正確な分布地図が作成されることになっている。ガスの組成については、ほとんどわかっていない。しかし、過去に行われた観測では、水など将来の月面探査に役立つ物質が含まれている可能性が示唆されている。