観測開始から1年、「あかり」が見た宇宙

【2007年7月11日 宇宙科学研究本部 トピックス

赤外線天文衛星「あかり」は2006年5月の観測開始以来、宇宙の赤外線地図作りのために全天観測や指向観測(一定方向の詳細観測)を行ってきた。「あかり」が見た宇宙の中から、このたび公開された「宇宙地図」や星形成領域などのすばらしい画像を紹介しよう。


「あかり」が波長9μmでとらえた全天画像

「あかり」が波長9μmでとらえた全天画像。クリックで拡大(提供:石原大助氏、JAXA

「あかり」が波長140μmでとらえたオリオン座と冬の天の川

「あかり」が波長140μmでとらえたオリオン座と冬の天の川。左は同じ領域の可視光画像。クリックで拡大(提供:[光学写真]国立天文台 福島英雄氏、[あかり画像]土井靖生氏、JAXA

「あかり」がとらえた、はくちょう座にある星形成領域(波長90μmと140μmから疑似カラー合成)

「あかり」がとらえた、はくちょう座にある星形成領域(波長90μmと140μmから疑似カラー合成)。クリックで拡大(提供:土井靖生氏、JAXA

昨年5月に本格的な観測を開始した日本初の赤外線天文衛星「あかり」は、順調に観測を続けている。「あかり」の目的は宇宙の赤外線地図作りで、精度を高めるために全天を2回以上観測する予定だ。すでに90%の領域について、これを達成している。

1枚目の画像は、「あかり」に搭載されている観測装置の1つ、近・中間赤外線カメラ(IRC)による波長9μm(マイクロメートル)の赤外線による全天画像だ。中央に見られるのはわれわれの銀河系の中心方向で、細長く伸びているのが天の川である。ちりが星の光で暖められて放射する赤外線が見えている。地図に使われた「あかり」のデータの解像度は約9秒角で、これまで利用されてきた赤外線天文衛星IRASによる宇宙地図よりも数倍高い。

「あかり」は、このほかに波長18μm、65μm、90μm、140μm、160μmの赤外線で観測を行っている。2枚目の画像は、波長140μmで見たオリオン座と冬の天の川で、新しく生まれた星の光で暖められたちりが強い赤外線を放っている。また、3枚目の画像は、はくちょう座にある星形成領域を波長90μmと140μmの赤外線でとらえて合成した画像である。大質量星が数多く生まれている領域が赤外線で輝いており、天の川のなかでもひときわ明るい場所だ。

「あかり」は、全天をくまなく見るだけでなく、とくに重要な領域を詳しく観測した。これは、指向観測と呼ばれ、1年間で約3500回実施された。黄道光、星間物質、星・惑星系形成、晩期型星、活動的銀河核/赤外線銀河、宇宙背景放射などを観測している。