恒星の衝突に由来?M85銀河で新種の爆発

【2007年6月5日 Caltech News Releases

おとめ座銀河団の銀河M85で、太陽のような2つの星の合体と考えられる突発的な爆発が観測された。この爆発は、超新星や新星、ガンマ線バーストとは異なる特徴を見せていることから、新種の爆発と考えられている。


宇宙における爆発現象としては、超新星と新星がよく知られている。超新星とは、星がその一生の終わりに起こす激しい爆発で、明るさは太陽の10億倍以上にもなる。一方新星とは、連星系において、伴星から白色矮星の表面にガスが降り積もることで起きる核爆発だ。

カリフォルニア工科大学のShrinivas R. Kulkarni教授が率いたチームが、おとめ座銀河団に属する4900万光年離れた銀河M85に観測した突発的な爆発現象は、超新星に比べると暗すぎ、新星と比べると明るすぎるものだった。この爆発の正体は、2つの恒星の合体と考えられている。M85銀河は主に年老いた星から構成されているため、この現象は、主に太陽と同じくらいの質量の星によって引き起こされたと考えられている。

この爆発には明るさ以外に、とても赤い色をしているという特徴がある。さらに、超新星や新星、ガンマ線バーストと比べると、爆発がひじょうにゆっくりと拡がることから、研究地チームでは新種の爆発と断定した。そして、「M85OT2006-1」という符号をつける一方で、「高輝度赤色新星」(Luminous Red Novae)と呼ぶことにした。

太陽程度の恒星はある程度核融合の燃料を使い切ると、外層が膨張する不安定な段階(赤色巨星)に入る。このとき、赤色巨星が別の恒星と連星をなしていた場合、大きく膨らんだ外層が相手の恒星も飲み込んでしまう可能性がある。外層といってもひじょうに希薄なガスなので、ただちに吸収してしまうわけではないものの、飲み込まれた恒星は摩擦によって回転エネルギーを失い、赤色巨星の本体へと少しずつ引き寄せられる。

多くのケースでは、赤色巨星はやがて核融合を完全に終え、外層は完全に吹き飛び中心に白色矮星だけが残るとされる。恒星の接近は止まり、白色矮星のすぐ近くを回ることになる。この恒星から白色矮星にガスが流れ込む条件が整うと、やがて新星爆発を起こすかもしれない。

一方で、赤色巨星が白色矮星になる前に恒星がぶつかってしまったのが「高輝度赤色新星」なのだろうとKulkarni教授らは考える。

超新星と新星が公に認められるまでには、ほぼ1世紀を要した。また、強力なガンマ線が宇宙のある一点から突然飛来してくる現象であるガンマ線バーストが天文用語に加わったのは、40年前のことだ。実は、「高輝度赤色新星」と同様の現象が10年以上も前、アンドロメダ座大銀河で一度観測されたことがあったのだが、その後詳しい研究が行われることがなかった。今回のような観測例が増えれば、将来は「超新星」や「新星」とともに「高輝度赤色新星」もおなじみの用語として定着するかもしれない。