「2種類の爆発を繰り返す星」きりん座Zを見てみよう

【2007年3月26日 アストロアーツ】

3月19日のニュースで取り上げた激変星「きりん座Z」について、月刊「星ナビ」で変光星のコーナーを担当されている、滋賀県ダイニックアストロパーク天究館の高橋進さんから解説をお寄せいただいた。変光星の奥深い世界の一端に触れていただきたい。また、きりん座Zは今が見ごろなので、望遠鏡をお持ちの方は観測に挑戦してみてはいかがだろう。


(激変星のメカニズムについての説明図)

激変星のメカニズムについての説明図。クリックで拡大(提供:高橋進氏)

(きりん座Zの光度曲線)

きりん座Zの光度曲線。クリックで拡大(提供:高橋進氏)

3月19日の天文ニュース「白色矮星の『小さな爆発』が『大きな爆発』とつながった」で紹介されたきりん座Z(Z Cam)ですが、ちょうど今が見ごろを迎えています。

先の天文ニュースでも説明されているとおり、きりん座Zは激変星で白色矮星と赤色星との近接連星です。赤色星から流れ出したガスが白色矮星に落ち込んでいきますが、このガスが白色矮星の周りに降着円盤を形作ります。降着円盤は普段はわりと安定的に回っていますが、ガスが多量にたまると不安定になり、急激に白色矮星に落ち込んでいきます。このときに増光が起こるわけで、「矮新星」とも呼ばれます。普段の暗い状態から突然に増光を起こす様子が新星に似ていますが、規模的には新星より小さいことから矮新星と呼ばれるのです。このような天体では結果的に白色矮星にガスがたまっていきますが、これが臨界量を超えると核爆発が起こり新星になります。今回の紫外線観測衛星GALEXの観測では激変星であるきりん座Zの周囲にこの新星爆発の跡が見られました。

このように激変星では矮新星と呼ばれる増光現象が起こりますが、赤色星から白色矮星に流れ込むガスの量によっては違った現象が見られる場合もあります。それはガスの流入量がうんと多い場合で、そうした場合は常に降着円盤が不安定になり、いつも増光しており、明るい状態が続きます。こうした天体は新星状天体(NL型激変星)と呼ばれます。また、赤色星からの流入量がそんなに多くもないが少なくもない場合はどうなるでしょう。そうした星では矮新星現象が頻繁に起こりますし、たまにNL型激変星と同じように継続的な明るい状態が続くこともあります。実はこのように中途半端に流入量が多い星のひとつがきりん座Z(Z Cam)で、このような激変星をZCAM型激変星と呼んでいます。

右の図はきりん座Zの光度曲線ですが、見てわかるとおり3週間に1度くらいの間隔で増光を起こしています。矮新星と呼ばれる通常の激変星が数か月かそれ以上の間隔で増光を起こすのに比べると、かなり頻繁な増光なのがわかります。ただ図の左端(1988年7月から9月にかけて)はわりと明るい状態が続いています。この状態はスタンドスティル(Stand still)と呼ばれ、NL型激変星のように増光状態が継続しているところです。

光度曲線のとおり、きりん座Zは明るいときは10等台、暗いときは13等以下で変化も速いので、毎日観測しても明るさがどんどん変わり大変に面白い星です。きりん座というと見つけにくい星座のようですが、きりん座Zはおおぐま座の頭からたどればわりと見つけやすい位置にあります。観測用の星図は日本変光星研究会のホームページの中の変光星図にZ Camとして入っています。4月は夜8時頃が子午線通過で、空高くに見えますので、まさに観測好期といえます。話題のきりん座Zの変光をぜひお楽しみください。

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