これまでの理論も吹き飛ぶ?
1秒間に1,122回転する中性子星の証拠

【2007年2月21日 ESA News

ヨーロッパ宇宙機関(ESA)のガンマ線観測衛星インテグラルが、超高速で自転する中性子星に由来するとみられる信号をとらえた。解釈が正しければ、中性子星は1秒間に1,122回転している。従来の理論をはるかに上回る数値で、遠心力で中性子星が分裂してしまう限界速度に近い。


(連星の想像図)

中性子星およびガスをはぎ取られる恒星からなる連星の想像図。クリックで拡大(提供:NASA/Dana Berry)

インテグラルが観測したのは「XTE J1739-285」と呼ばれるX線源。ふだんは検出できないが、間欠的にX線を放つのが特徴だ。1999年にNASAのX線観測衛星RXTEが発見し、2001年、2003年、そして2005年にX線バーストを起こしているのが確認されている。

XTE J1739-285の正体は、中性子星(解説参照)がほかの恒星の周りを回っている連星らしい。中性子星はとなりの恒星からゆっくりとガスを引き寄せるが、それが表面に5〜10mほど積もると、爆発的な熱核反応が始まり、数秒から数分にわたってばく大なエネルギーが解放される。このとき、X線バーストが観測されるのである。

同じ原理でX線バーストを行う連星系(X線連星)はいくつか見つかっているが、放たれるX線の強さが規則的に変動しているという特徴がある。その周期は中性子星の自転によって作り出されている可能性が高い。過去に観測された同種のX線連星では、1秒あたり270〜619回の変動が観測されている。つまり、そこに存在する中性子星は1秒で270〜619回転しているのだ。恒星として輝く間はゆっくり自転していても、極端な収縮を起こして中性子星となる間に回転速度は大幅に上がる。ちょうど、フィギュアスケートの選手が伸ばした腕を縮めると回転が速まるのと同じ原理だ。

中性子星の専門家は統計に基づき、1秒あたり760回転が限界だろうと推測し、そこから中性子星の物理を解明しようとしていた。回転による遠心力が中性子星を引き裂くには、はるかに速い回転が必要である。そこで、遠心力以外にも回転を抑制する何らかの要因が働いているのだろうと考えられていた。

ところが、XTE J1739-285からのX線で観測された変動の周期は、1秒あたり1,122回。遠心力による破壊の限界に近い。それまでの仮説は吹き飛ばされてしまいそうだ。もちろん、このデータを裏付けるためにはXTE J1739-285のX線バーストを再び観測する必要がある。また、ほかのX線連星を捜索する必要性も一層高まったと言えるだろう。

中性子星ってどんな星?

太陽の質量の8〜30倍の星が超新星爆発を起こしてできるのが中性子星。直径20kmほどの大きさに電気的に中性な中性子がギューッと押し固められている。爆発によって大部分が吹き飛んでしまって太陽の3倍ほどの質量になっていると考えられていて、角砂糖1個分で数億トンという超高密度になっている。(「宇宙のなぞ研究室Q.087 中性子星ってどんな星?より抜粋 [実際の紙面をご覧になれます])