「すざく」搭載観測機器で小マゼラン雲の超新星残骸の撮影成功

【2005年8月17日 JAXA 宇宙科学研究本部 宇宙ニュース

7月10日に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられた「すざく」(Astro-EII)から、初の画像が届いた。残念ながら、8月8日X線微小熱量計(XRS:X-ray Spectrometer)による観測不可がニュースとなった「すざく」だが、その後、2つ目の観測機器による観測で、小マゼラン雲にある超新星残骸の観測に成功した。

(図1 4台のX線CCDカメラで得たX線像) (図2 X線CCDによるX	線スペクトル)

(上)図1 4台のX線CCDカメラで得たX線像、(下)図2 X線CCDによるX線スペクトル。クリックで拡大(提供:宇宙科学研究本部 宇宙ニュースのページより)

7月10日に鹿児島の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられた「すざく」(Astro-EII)は、搭載された観測機器の初期運用を続けている。8月8日に3種類の観測機器の一つであるX線微小熱量計(XRS:注3-2)の観測能力を喪失したが、その後、8月12日夕方から13日夕方にかけた運用で、2つ目の観測機器である4台のX線CCDカメラ(XIS:X-ray Imaging Spectrometer)のカバーを開いた。その結果、小マゼラン星雲にある超新星残骸(星の爆発の痕)のX線像を観測することに成功したのだ。

4台のX線CCDカメラ(従来型より性能を向上させた2種類のCCDを搭載)で得られたのは、X線像(図1)と像から得られたX線スペクトル(注1 / 図2)。まだ詳細な較正は済んでいないのだが、X線図スペクトル(図2)には、高温ガス特有の輝線(注2)が多数見えており、これまで見えにくかった500-700eV付近の輝線がくっきりと示されている。これは、世界最高の性能を示すものだ。このエネルギー帯に見える輝線は、窒素や酸素が出すものであり、「すざく」の観測により、生命のもととなるこれらの元素の宇宙における生成・流転について、新しい知見が得られることが期待されている。

X線望遠鏡は、JAXA、名古屋大学、NASAゴダード宇宙飛行センターほか、また、X線CCDカメラは、JAXA、京都大学、大阪大学、マサチューセッツ工科大学ほかが強力して開発されたもので、今後の本格的な観測による多数の成果が期待されている。

なお、「すざく」は引き続き、3つ目の観測機器である「硬X線検出器」(HXD: Hard X-ray Detector)の立ち上げも間もなく行う予定だ。

  • 注1)X線スペクトル:各エネルギー帯のX線がそれぞれどれくらいの量放射されているかを示すもの
  • 注2)輝線:ある元素の特有のエネルギー

X線天文学: 宇宙の高エネルギー現象をとらえる鍵となるX線は、波長にして1〜100オングストローム程度の電磁波であるが、可視光や電波と違って地球大気で吸収されてしまうため、X線天文学の登場は、1960年代のロケット工学の進歩が必要だった。現在では、太陽や彗星、近距離の恒星から、およそ100億光年かなたのクエーサーまで、宇宙のあらゆる天体がX線観測の対象となっており、今や可視光天文学や電波天文学と並んで、宇宙の謎を解き明かす重要な柱となっている。(最新デジタル宇宙大百科より)